FXの取引歴が長い人でも「くりっく365」の存在については
「店頭FX」と呼ばれるいわゆる「普通のFX」と「取引所FX」と呼ばれる「くりっく365」は、それぞれメリットとデメリットがあって、ある条件下においてはっきり使い分けができるものなんです。
お急ぎの方で、「くりっく365については、だいたい知ってるよ」という人は、さっそく「店頭FXとどちらが良いか?」から読んでみてください。
くりっく365とは
まず初めに、「店頭FX」と「くりっく365」は、どちらも同じFXで異母兄弟みたいなものです。
多くのFX業者は店頭FX
「店頭FX」は、FX業者を相手に売買をする「相対取引」という仕組みです。
世界的に見ても、FX業者で口座開設するFXのほとんどが、この相対取引で行われています。
くりっく365とは取引所FX
「くりっく365」は、株式会社 東京金融取引所(金融取)のFXの商品名のことで「取引所FX」と呼ばれるものです。
文字通り取引所を介して売買をするもので、「相対取引」に対して「取引所取引」とも呼ばれます。口座開設は、金融取の厳格な資格要件を満たした指定業者でしかできません。
以前は税制が有利だったが今は同じ条件
また、税率は2011年までは「くりっく365」が20%、「店頭FX」は利益の額に応じて変動する仕組みだったので、税金の面では「くりっく365」が有利でした。
しかし、現在はどちらも同じ税率、同じレバレッジ25倍になっているので、両者の違いはかなり小さなものになってきています。
店頭FXとの違いを比較
昔に比べ「店頭FX」と「取引所FX」の違いがかなり少なくなったとは言っても、取引形態自体が違うので細かなルールは違います。
また、「くりっく365」には、「くりっく365ラージ」というコースもあるので一緒に比較してみます。
「くりっく365ラージ」は、通貨ペアの種類がとても少ないのですが「くりっく365」よりスプレッドが狭いことが特徴です。
ただ、この3つの違いを挙げればキリがないので、特に取引で重要な部分だけをピックアップして比較してみたいと思います。(2017年10月時点で比較)
店頭FX | 取引所FX | |||
---|---|---|---|---|
くりっく365 | くりっく365ラージ | |||
取引形態 | 相対取引 | 取引所取引 | ||
取引時間 | ほぼ24時間 | ほぼ24時間 クロス円・クロスカレンシーで取引時間が異なる | ||
通貨ペア数 | 20通貨ペア程度~ 80通貨以上まで ※ | 24通貨ペア | 5通貨ペア | |
取引手数料 | 無料 ※ | 無料 ※ | 有料※ | |
スプレッド | 原則固定または変動制 ※ | 変動制 | ||
取引所FXと比べ 狭い~広いまでさまざま ※ | くりっく365ラージ と比べ広い | くりっく365 と比べ狭い | ||
スワップ | 受取額<支払額 ※ | 受取額=支払額 | ||
最小取引単位 | 1通貨や1,000通貨など 少額の業者が多い ※ | 1万通貨 ※ | 10万通貨 ※ | |
両建て | 可能 ※ | 可能 | ||
レバレッジ | 1~25倍で選択可能 ※ | |||
税金 | 税率 | 20.315%(申告分離課税) | ||
損益通算 | デリバティブ取引と通算可能 | |||
損失繰越 | 3年間可能 | |||
資産管理 安全面 | 信託銀行などへ全額預託 | 金融取へ全額預託 |
※:業者・取引コース・通貨ペアなどで異なる
レートと約定・取引時間が違う
レートと約定の仕組みが違う
「店頭FX」の価格提示は、FX業者が行います。
「くりっく365」は、複数のマーケットメーカーから価格の提供を受けて、顧客に最も有利な価格をシステムが自動的に合成し提示する仕組みなので、とても透明性が高いとされています。
また、「約定拒否、不自然なスリッページが発生することはない」ともアピールしていますが、業者が不利なスリッページを意図的に操作ができない仕組みであるだけで、スリッページは基本的に発生すると思った方が良いでしょう。
また、ストリーミング注文では、注文時点と約定時点の価格がスリッページ許容幅を超えていれば約定しないということも、店頭FXと変わりません。
取引時間が違う
「くりっく365」は「店頭FX」とは違い、クロス円とクロスカレンシーで取引時間が異なります。また、取引日は、土日元日を除いた毎日です。
通貨ペア数が違う
「くりっく365」の取扱通貨ペアには、短期・中期・長期どの取引にも適した銘柄がそろっていますが、数は24通貨ペアとごく一般的です。
しかし、高金利通貨のトルコリラ/円、南アフリカランド/円、メキシコペソ/円、マイナー通貨のノルウェークローネ/円、香港ドル/円、スウェーデンクローナ/円、ポーランドズロチ/円の取引ができるのはとても魅力的です。
「くりっく365ラージ」の取扱通貨ペアは、国内で初心者から中上級者まで人気が高い、以下の5通貨ペアに厳選している感じです。
くりっく365(24通貨ペア) | くりっく365ラージ(5通貨ペア) |
---|---|
取引手数料がかかる
取引手数料は、基本的に「くりっく365ラージ」が有料、「くりっく365」が無料とされていますが、取扱業者によって異なります。また、有料の場合は金額も業者によってさまざまです。
「店頭FX」は、業者や取引コースによっても違いますが、最近では無料にしているところがほとんどです。
スプレッドは広い
ある時点のスプレッドを「くりっく365」「くりっく365ラージ」「ヒロセ通商 LION FX」で比べてみました。
米ドル/円であれば「LION FX」は 原則固定 0.3pips の狭さに対して、タイトスプレッドとされる「くりっく365ラージ」が 1.3pips、ワイドスプレッドの「くりっく365」が 3pipsです。
「くりっく365」「くりっく365ラージ」のスプレッドは変動制なので、もちろん時期によって数値が大きく変わりますが、スプレッドに関しては原則固定にできる店頭FX業者には敵わないでしょう。
くりっく365とくりっく365ラージ
左が「くりっく365」、右が「くりっく365ラージ」
※2017/10/23 11:00時点
ヒロセ通商
※2017/10/23 11:00時点
スワップポイントは売り買い同額
「くりっく365」「くりっく365ラージ」のスワップポイントは、受取額と支払額が一本化されていて同額です。
また、取扱業者が違っても金額は同じです。多くの「店頭FX」では、受取額より支払額の方が多いところがほとんどなので、とてもフェアだといえます。
ただし、店頭FXに比べて受取金額が多いわけではないので、有利とは言い難いですね。
たとえば、トルコリラ/円の場合の過去の実績を見ると、1日平均63円~121円で推移しており、2017年9月の1日平均は91円です。
そのため、「店頭FX」の業者で探せば、もっと高金利なところは多いと思います。
スワップポイントが比較的高い店頭FX業者については、次の記事も参考にしてみてください。
最小取引単位が大きい
最小取引単位は「くりっく365」が1万通貨から、「くりっく365ラージ」が10万通貨からなので、少額取引が中心の人にはオススメできません。
(南アランド/円、ノルウェークローネ/円、香港ドル/円、スウェーデンクローナ/円、メキシコペソ/円は10万通貨)
「店頭FX」では、ほとんどの業者で1,000通貨単位から、SBI FXトレードにいたっては1通貨から取引可能です。
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資産管理・安全面は比較的高い
預託金は、「くりっく365」「くりっく365ラージ」の取扱業者を通じて、全額が金融取へ保全される仕組みになっています。
これは保全先が違うだけで、分別管理の仕組み自体は「店頭FX」と変わりません。
「くりっく365」「くりっく365ラージ」は、金融取の厳格な資格要件を満たした業者だけが取扱できる商品です。また、金融取の自主規制委員会によって、常に運営状況がモニタリングされているため、取扱業者は比較的信頼性が高いといえます。
店頭FXとどちらが良いか
「店頭FX」「くりっく365」「くりっく365ラージ」は、基本的にはほぼ同じFXだと言えるでしょう。スペックこそ違いますが、全く異なる金融商品ではありません。
結局、どちらが有利不利はあまり関係なくて、時と場合で使い分けることが良いと思います。
両建て時にはくりっく365が有利
まず、注目してもらいたいこところは、「スワップポイントが一本化されており受取額と支払額が同額」というところです。そして、それを利用して両者を使い分けする最大のメリットは「両建て」にあります。
両建ては、トレーダーの考え方の違いから常に賛否両論あるものですが、相場が急変した場合のロスカット対策として、積極的に活用している人も多いかと思います。
実は、くりっく365の両建て決済には、気配値で決済せず、相反する2つのポジション同士を相殺させる「建玉整理」という決済注文があり、これにはスプレッドコストがかかりません。(通常決済をしてしまうとスプレッドコストが発生します)
また、スワップポイントも一本化されているため、「逆ザヤ」が発生しないので、両建ての場合はコスト面で店頭FXより有利なんです。
そのため、指標発表時などリスクが高いときに取引する場合に、くりっく365にはメリットがあるでしょう。
ただし、「くりっく365」「くりっく365ラージ」どちらの場合でも、取引手数料がかかってしまう業者ではこの手法の効果はあまり期待できません。
通常のFX取引なら店頭FXの方が有利
通常の相場でスキャルピングやデイトレードをする場合には、店頭FXの方がスプレッドが有利な業者が多いので、そちらを利用した方が良いと思います。
このように、「くりっく365」は取引のタイミングとトレードスタイルで使い分ける事をオススメします。
まとめ:くりっく365のメリット・デメリット
ここまで読んで頂いた方は、最初に比べて「くりっく365」のイメージが変わったのではないでしょうか?
「これまでの店頭FXと、取引方法が大きく変わってしまうのではないか?」「何か大きな落とし穴があるのではないか?」と不安に感じている方も中にはいらっしゃるのですが、基本的には「店頭FX」と同じFXだということが分かっていただけたかと思います。
では、最後に「くりっく365」のメリット・デメリットをまとめます。
メリット
- 両建ての決済が有利
- スワップポイントが一本化
- 高金利・マイナー通貨ペアの取扱がある
- 取扱業者は信頼性が高い
「くりっく365」の主なメリットは上記の4つです。
しかし、スプレッド・スワップポイントの受取額・約定力・通貨ペアなどで考えた場合、比較対象の店頭FX業者のルールや取引のタイミングによって、「くりっく365」が有利な場合もあれば不利な場合もあり、その差も僅差であることが多いです。
そのため、メインの取引口座として、あえて「くりっく365」を使う理由は特になく、「店頭FX」で条件の良い業者を探したほうが良いと思います。
つまり、現時点で「くりっく365」を使う決定的なメリットは、やはり「両建て決済が有利」という点だけだと思います。
おすすめの店頭FX業者については「FX口座おすすめランキング!初心者向け業者比較【プロトレーダー監修】」をご覧ください。
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デメリット
- 業者によって取引手数料がかかる
- スプレッドが変動制
- 取引単位が大きい
- スワップポイントの受取額はそれほど高くない
デメリットは、やはり業者によって取引手数料がかかってしまうことが大きいと思いますので、業者選びの際には気をつけてください。
また、スプレッドは変動制なので、タイミングによって「店頭FX」よりも狭い瞬間もあるかと思いますが、一時的なものなのであまり期待しないほうが良いでしょう。
くりっく365全業者の比較は次の記事をご覧ください。
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