「エリオット波動」とは、ラルフ・N・エリオットが確立した相場理論で、価格がサイクルの中でどの辺りに位置しているのかを判断し、相場の天井や底値を予測するのを助けてくれる理論です。
エリオット波動理論の最大の特徴は次の2つです。
- 相場の波動は5波の上昇と3波の下落のリズムの反復で構成される
- フィボナッチ数列を駆使して波の数や目標水準を予測する
エリオット波動のメリット
- 今後どのように価格が動いていくのかが予想できる
- 値動きの目標値を予測できる
相場では波を捉えることと、その波に乗ることが重要ですよね。
エリオット波動は波の基本的なリズムとサイクルを教えてくれます。
現在の価格がエリオット波動の8つの波のどこに位置しているのかが分かれば、将来の値動きを予測することができるのです。
それと同時に、現在の価格がどこまで上昇または下降するのかといった目標値を予測することができます。
この記事では、エリオット波動の使い方を解説しており、その他のテクニカル分析は次の記事で解説しています。
テクニカル分析の種類・基本編|FXチャート・為替レートの見方まとめ
また、エリオット波動では、1.38・1.5・1.62といったフィボナッチ数列が出てきます。
フィボナッチも有名なテクニカル分析の一つで、使い方は次の記事で詳しく解説しています。
目次
エリオット波動の基本型
エリオット波動は、5つの上昇波と3つの下降波の8つの波で1つの周期を作ります。
上昇波は1、3、5の3つの推進波と2つの修正波、下降波はa、cの下降推進波とbの修正波で構成されます。
第1波
マーケットに参加しているひと握りの投資家によって成り立つ未成熟な弱弱しい推進波。
第1波の約半分は下落した水準からの反発としか見えないため、投資家のほとんどは半信半疑の気持ちで相場に参加する値固めの過程の一部です。
第1波は3つの推進波のうちで最も短いことが多いのが特徴ですが、大底を形成した後は力強くなる傾向があります。
第2波
第1波に参加した臆病な投資家の神経質な投げ売りや見切り売りなどで生じる修正波動。
第1波の上昇幅に対して、第2波は50~62%の修正率に収まることが多くなります。
第3波
通常、1波、3波、5波の推進波の中で最も長く、最も強い波です。
第1波の頂上を突き抜けて買いシグナルを出します。
出来高は最大になり、最も利益の出る局面です。
この時点ではファンダメンタルズも好転しており、延長、エクステンションの可能性が最も高く、3つの推進波の中で最短になることはありません。
第3波は第1波の上昇幅の1.38倍、1.5倍、1.62倍、2.62倍になる可能性が考えられますが、1.62倍以上の確率が高いと言われています。
第4波
第3波の修正波で、第4波の底は必ず第1波の頂上より上になり、第1波の頂点とは重ならないのが原則となります。
第4波は同じ修正波でも第2波と構成が異なるのが特徴で、第2波か第4波のどちらかが複雑な形状となることが多くなります。
第5波
上昇推進波の最終波ですが、第3波ほどの力強さはありません。
最終投資家の登場で、出来高も大きく膨らみます。
a波
下降の推進波で、5つの波で構成されるのが特徴です。
a波は上昇トレンドの小さな押しと勘違いされることが多いのですが、5つの波が確認できた所でそうではないという事が明確になります。
b波
下降トレンドにおいて反発する修正波で、上昇時にも出来高が伴いません。
反発の内容によっては下降前の高値を目指したり、場合によっては高値を超える事もあります。
c波
しばしばa波のボトムを割って下降し、テクニカル指標の多くが売りシグナルを発信する。
c波が出現することにより、上昇トレンドが終了したことが明らかとなります。
エリオット波動の見つけ方
エリオット波動を捉えるなら、第3波を狙っていきます。
第3波を見つけるには、第2波の修正の度合いを確認することがポイントです。
第1波への修正の仕方で第2波であることを確認することができます。
第2波の修正の特徴
- 第1波の底を下回ることはない
- 修正幅は第1波の上昇幅の38%~62%だが、50~62%の修正率に収まることが多い。
このような特徴を見つけることで直前の上昇と下降がエリオット波動の第1波と第2波であることが確認できます。
そして、第3波の上昇幅は第2波の下降幅の138%~162%になることが多くなります。
このチャートでは上昇の後、一度調整をし、再び上昇している一目均衡表で言えば「N波動」のような形になっています。
上昇の後の下降に注目し、
①の地点の下落の底 = 最初の上昇幅の38%~62%の下落率
であればエリオット波動の第2波である可能性が高く、次の上昇が第3波である可能性も自ずと高くなります。
エリオット波動のデメリット
- 1つの波動がいつまで続くのかわからない
- 人によって分析・解釈が異なる
- 後付け理論になりやすい
- 「延長(エクステンション)」が起こり、波の数が変わることがある
- 「フェイリャー(未達成)」が起こり、波動が壊れることがある
「エリオット波動はアート(芸術)」だと揶揄されることがあります。
オシレーター分析など、他のテクニカル指標のように明確な答えがないので人によって波形が違って見えたり、波動に対する解釈が変わってしまうのです。
同様に様々な解釈ができる事から、後になってローソク足で波動を確認するときれいに波動にはまっていますが、リアルタイムでトレードしていると波動の形状が捉えづらくなります。
「延長(エクステンション)」により波動の数が異なることがある
エリオット波動の推進派の中の1つが大きく引き延ばされることを「延長(エクステンション)」と言います。
エクステンションが起こることにより、上昇局面が5波から9波の構成になります。
延長はその延長の中でもさらに起こるため、波動の確認が難しくなる要因でもあります。
延長の特徴は以下のようなものです。
- 第1波、第2波、第3波の3つの推進波のうち、どれか1つに延長を含むことが多い
- 第3波が最も延長が起こりやすい
- 第3波が延長された場合、第5波はシンプルなパターンになりやすく、第1波と同じ値幅や長さになることが多い。
上記のチャートでは第3波に延長が起こっています。
第3波が5波動で構成され、都合9波動のエリオット波動になる形です。
延長が第3波で行われたので、第1波と第5波は延長する確率が低くなります。
「フェイリャー」により波動が壊れることがある
「フェイリャー」とは失敗・未達成という意味で波動の壊れと解釈されます。
フェイリャーは推進波の最終波の第5波に見られる特有の動きで、通常、第3波の頂上を超えるはずの第5波が第3波の頂上に届かないことを言います。
フェイリャーにより、チャートパターンとしては「ダブル・トップ」ないしは「ダブル・ボトム」を形成し、戻りの勢いの強さが近い将来、相場の転換を予告しています。
これがフェイリャーが起こったときの価格の動きです。
第5波は第3波の頂上を超えるはずですが、第5波の上昇推進力が弱く、第3波の頂上の下で押し戻されています。
この形ではチャートパターンの「ダブル・トップ」となりますので、本格的な下降トレンドへの転換を警告しています。
第5波がフェイリャーかどうかの確認は、第5波がどのように構成されているかを観察します。
フェイリャーの5波では第5波の中で細かい階段での5波動によって形成されますので、第5波の中での5波動があまりにも細かく、とても第3波を突き抜けられそうにない場合はフェイリャーを疑います。
上記の図がフェイリャーになり得るパターンです。
エリオット波動の第5波の場合は第3波の頂点より上が天井となりますが、細かく5つの波を描いてしまい、到底第3波の頂点に届きそうにありません。
この図の場合、すぐに折り返して下降すると右肩下がりのダブルトップとなります。
エリオット波動のエントリーポイント
波動を明確に見つけることが難しい時もあり、一見使えないと思われがちなエリオット波動ですが、特に捉えやすい第3波を狙えば十分にエントリーポイントを見つけることができます。
Ⅰ 3波の始点でエントリーする
エリオット波動では3波が最も力強く大きな推進波ですので3波をメインに狙ってエントリーすることが望ましいです。
エリオット波動理論では「2波の底は1波の始点を下回らない」ので、2波の底が1波の始点に対してどこでストップするかに注目します。
3波の上昇幅は1波の上昇幅の1.38倍、1.5倍、1.62倍、2.62倍が考えられますが、1.62倍になる確率が最も高いのでこの値を目標値にします。
ただし、3波はトレンドの始めにあたりますので、3波の始まりを見極めるのが難しいことがあります。
そのため、次に説明するⅡの手法まで待っても遅くはありません。
最初の上昇からの調整が50~62%の範囲だった場合はエリオット波動の第3波が起こる可能性が高くなりますので、①で反転したらエントリーします。
ただし、①の地点を見つけるのは比較的難しいのでⅡの手法まで待つのが安全です。
Ⅱ 3波が1波の頂点を抜けたタイミングでエントリーする
Ⅰの手法よりもやや難易度が低く、安全な方法が、3波が始まって、1波の頂点を抜けたタイミングでのエントリーです。
3波が始まったことを確認してからのエントリーとなりますし、Ⅰよりもエントリーが遅くなったとはいえ、十分に利益が狙える位置ではあります。
第2波の後、上昇して第2波の始点を上に抜けたところの②でエントリーします。
Ⅲ 5波の始点でエントリーする
5波を見つけるのは3波を確認したあとですので、比較的容易となります。
「4波の安値は1波の高値とは重複しない」という原則がありますので、エントリータイミングもある程度分かりやすいのが特徴です。
第3波の大きな上昇が終わり、第4波が終わった後の最後の上昇の始点の③でエントリーします。
第3波は見つけるのが簡単ですが、第4波は複雑な形になりやすいので明確に上昇してからの新規買いが望ましいです。
また、3波がエクステンションした時は、損切り位置がかなり遠くなってしまうので、エントリーは見送った方が良いです。
Ⅳ c波の始点でエントリーする
5波を確認した後、波動は調整波に入ります。
b波に注目してb波が高値を更新できないことを確認してからエントリーします。
注意点はc波のエントリーは他のⅠ~Ⅲと違い、トレンドの方向に逆らったポジションを保有することになることです。
c波だと思っていたものが5波のエクステンションの一部であることもあり得るので損切りポイントはしっかりと決めておきましょう。
b波が高値を更新できないことを確認した④で新規売りポジションを持ちます。
より確実に下降を確認する場合はb波のボトムを割ってから参入しても良いです。
エリオット波動におすすめのインジケーター「ZigZag」
ZigZagは自動で高値・安値でラインを引いてくれるインジケーターです。チャートの赤い直線がZigZagです。
自分でチャートに線を引かなくても、ZigZagが描くラインでエリオット波動の波を見つけるのに役立ちます。
ZigZagのパラメーターは以下の3つです。
ExtDepth:ZigZagが示す山と谷の最小期間
ExDeviation:転換率
ExBackstep:反転の判断の必要期間
MT4のデフォルト設定値では12.5.3となっています。
ZigZagは、「ヒロセ通商」のチャートやMT4で標準搭載されています。難しい設定なしで使ってみたい方は「ヒロセ通商」がおすすめです。
ヒロセ通商(LionFX)を辛口評価!アプリの評判と口コミとデメリットも!
エリオット波動について詳しく書かれているおすすめ書籍
最後に、エリオット波動についてさらに詳しく知りたい人は以下の本もおすすめです。
「エリオット波動入門」
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基本から応用まで網羅されたまさしくエリオット波動の教科書です。
「日本テクニカル分析大全」
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初心者からプロまで愛用している本ですので、1冊持っておくと色々な場面で役に立ちます。
「先物市場のテクニカル分析」
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「日本テクニカル分析大全」とともに持っておくとテクニカル分析を研究するのにかなり役立ちます。