アメリカ利上げは株価、為替にどう影響するか?過去から考察する

更新日:

LINEで送る
Pocket

はじネコ
アメリカが利上げをするっていう話なんですけど、ドル円に影響あるんですか?
ていうか利上げってなんですか?
せんせえ
今の市場は中央銀行の動向が最重要と言っても過言じゃないよ。
今回は、利上げとは何かという基本的なことから、過去の利上げ時から今後どうなるかを考えていくよ。

2016年12月に、アメリカFRB(Federal Reserve Board、連邦準備制度理事会)が1年ぶりの利上げを行いました。

また、2017年と2018年にも複数回利上げを実施する旨を予告したことで、今後のアメリカ経済にどのような影響を与えるか世界が注視しています。

影響は、当然ながら日本も免れません。

今回のアメリカの利上げは、日本の株や為替にどのような影響をもたらすのでしょうか?

利上げとは一体なんだ?

そもそも、テレビ・ネットのニュースや新聞で当たり前のように使われる「利上げ」とはどのような意味でしょうか?

利上げとは、国の中央銀行が政策金利を上げることを指しています。金融政策の一環です。

日本だと中央銀行に当たるのが「日本銀行」ですが、アメリカだと「FRB」と言います。

そして「政策金利」とは、中央銀行が一般的な銀行にお金を貸し出す際の金利のことです。

せんせえ
つまり、アメリカの利上げとはFRBが一般の銀行に融資する金利を引き上げる、という意味だね。

中央銀行から一般の銀行へ貸し出すお金の金利が上がると、自ずと一般の銀行から企業へ貸し出されるお金の金利が上がります。

このように、中央銀行が利上げを行うことで銀行の金利を間接的に上げることになり、企業は相対的にお金を借りづらくなります(金利が高いから)。

その結果、市場に出回るお金が減ります。

はじネコ
金利が上がると市場に出回るお金が少なくなるのか。

なぜ利上げを行うのか?

利上げは、好景気による過度なインフレを防止するために行われます。

好景気になると、企業は設備投資に積極的になり、個人は積極的に消費活動を行うようになります。

つまりお金を積極的に使用してモノを購入するので、需要が増えた結果としてモノの値段が上昇していきます。

せんせえ
景気が良い→設備投資して業績を上げる→給料が上がって贅沢する→物価が上がる。

好景気だからと言ってよいことばかりではありません。

モノの値段が上昇するということは、逆に貨幣の価値(為替レート)が下落するということです。

極端に貨幣の価値が下落してしまうと、いくらお金があってもモノが買えない状況に陥ってしまいます。これが「インフレ」と呼ばれる状態です。

こうなりますと、当然ながら外国からモノを輸入することも難しくなり、国としての信用を失う恐れもあります。

せんせえ
バブルを未然に防ぐためには適切なタイミングで利上げをしないといけない。
はじネコ
だから中央銀行はインフレ率を気にしているんですね。

したがって、好景気の時であっても適切な時期に適切な幅の利上げを行って、為替レートを調整する必要があります。

利上げを行うことで市場に出回るお金の供給量が減ると、相対的にお金に対する需要が上がりますよね。

すると、為替レートが上がりやすくなります。これが利上げの意図です。

景気の過熱を抑制するのですから、アメリカの株価は下落します。

また、アメリカの株価に連動して日本の株価も下落します。

もちろん、利上げによって当初意図した以上にお金の供給量が減り、モノに対する需要が増えずに景気が悪くなってしまうことがあります。

この場合は逆に利下げを行い、景気を刺激するわけです。

こうした利上げや利下げは「金融政策」と呼ばれ、その国の経済に影響を及ぼすことから多くの人に注目されています。

国同士が複雑に絡み合うグローバル経済では、その国だけではなく各国の経済にも影響を与えることになります。アメリカのような超大国であればなおさらです。

過去にアメリカが利上げをした時期

せんせえ
ここで過去の利上げ時はどんな状況だったのか見てみよう。

今回のFRBによる利上げの影響を考える上では、過去の利上げについて見ると参考になりますよね。

ここでは、過去2回(1999~2000年と2004~2006年)の利上げの幅や経済情勢について見てみましょう。

1999~2000年のITバブルと利上げ

当時のアメリカは、いわゆる「ITバブル(ドットコムバブル)」で経済が好調でした。

1990年代後半にインターネットが発達したことで、アメリカ企業はIT投資を積極的に実施します。

折からの低金利政策によって、企業は容易に資金を調達できたために、ITサービスを提供するベンチャー企業が大量に増殖しました。

FRBは、インターネットがもたらしたバブルを食い止めるために、1999年から2000年にかけて都合6回の利上げを実施しました。

これによって、政策金利は4.75%から6.5%にまで上昇します。

利上げをきっかけとしてITベンチャーの株価は崩壊し、倒産に追い込まれます。

2001年の同時多発テロもあって、アメリカは不況へ突入しました。

2004~2006年のサブプライムローンの問題と利上げ

ITバブルが終焉し、不況に陥ったことで、FRBは景気刺激策として利下げを実施します。

特に、2001年から2004年にかけては政策金利が1%台と、歴史上最も低い水準の金利を維持していました。

また、急成長を遂げるアジア諸国から多額の資金がアメリカに流入したこともあって、企業も個人も非常にお金を借りやすい状況にありました。

その結果、住宅ローンやそれを元手とした金融商品に対する需要が伸び、「住宅関連バブル」とでも言うべき状況が生まれます。

景気の過熱を背景として、FRBは2004年以降利上げを実施します。

1%という歴史的な低金利だった2004年5月以降、2006年6月までに17回もの利上げを行い、政策金利は5.25%にまで上昇しました。

この利上げによって金融商品に対する需要が低下し、住宅市場が崩壊へ向かいます。

2008年には大手投資銀行だったリーマン・ブラザーズが倒産するという「リーマン・ショック」が発生し、アメリカのみならず世界中を恐慌状態へ陥れました。

リーマンショックとは?原因をわかりやすく解説

2008年に起きたリーマンショックは現代の投資を考える上で欠かせない存在となっています。 今回はそのリーマンショックについて見ていきましょう。 目次1 リーマンショックとは?2 原因はサブプライムロー ...

続きを見る

過去に利上げを行った後の値動き

せんせえ
次に、利上げをした後に相場はどう動いたのかを見てみよう。

以上が過去2回の利上げの経緯ですが、もう少し詳しく影響を見てみましょう。

具体的には、利上げ実施後に為替(ドル・円)、株価、国債、金価格はどう動いたのでしょうか?

ITバブル期の利上げ(1999~2000年)による値動き

利上げは景気抑制策・通貨価値向上政策です。したがって、理論上は「ドル高・円安」「日米とも株価低下」「国債利回り上昇」「金価格下落」となります。

お金(ドル)の価値は上がるために、相対的に円や現物である金の価格は下がるわけです。

しかし、実際の所はそう単純ではありません。

まず、ITバブル期を見てみると、政策金利の引き上げにもかかわらず「ドル安円高、のち反転」「日米とも株価上昇、のち急落」「国債利回り上昇、のち急落」「金価格停滞」となっています。

特に、この時期はバブル崩壊までドル安円高にもかかわらず日米とも株価が上昇したということで、理論とは全く逆の相関を示していました。

この時は、むしろ利上げが好景気のお墨付きとして機能し、株価上昇トレンドが続いたとされています。

1998年〜2001年のドル円と日経平均株価の比較チャートです。(赤=ドル円、青=日経)

1999年の利上げ実施前から、FRBでは予測よりも高いインフレ率が続いていたことを根拠に、利上げをほのめかす発言がありました。

2000年の5~6月になると需要の伸びの減速が確認されたこともあり、利上げは停止されます。

この年の後半になると、景気の減速は顕著となり、年明け以降に利下げする可能性を織り込みながら市場を注視する態勢が取られるようになりました。

結局、この時は利上げそのものが為替・株価・国債利回りを理論通りに動かしたと言うよりも、利上げが契機となったITバブルの崩壊によって大きな値動きが起きたと言うことができます。

また、金価格は概ね横ばいで、当時の金融政策の影響は比較的少なかったと見ることができます。

住宅バブル期の利上げ(2004~2006年)による値動き

2004年から2006年にかけて17回の利上げが繰り返されました。

為替は利上げ初期(2004~2005年初頭)にかけていったんドル安・円高へ進むも、その後急反発、利上げ終盤になって再度ドル安・円高へ進みました。

2004年〜2007年のドル円と日経平均株価の比較チャートです。(赤=ドル円、青=日経)

株価は利上げ期間中ほぼ一貫して上昇トレンド(バブル崩壊後急落)であったのに対し、国債利回りはほぼ横ばい、金価格もほぼ一貫して上昇という値動きでした。

2年あまりで1%から5.25%にまで政策金利を上げたにもかかわらず、あまり理論通りの値動きを示したとは言えません。

事前に金利引き上げがFRBから「予告」されていたこともあり、市場は利上げの影響を織り込み済みで思ったような効果が上がらなかった(景気引き締めには成功しなかった)と言えそうです。

ただし、最終的にはサブプライムローンに端を発する市場の混乱が起きたわけで、違った角度から見ると利上げの効果が蓄積されて暴発した、とも言えるかもしれません。

現在の経済情勢は過去の利上げ時とどこが違う?

過去2回の歴史を振り返ってから今回の利上げ局面を見直すとどうなるでしょうか。

最後に、現在の経済情勢と過去との共通点や相違点を振り返ることで、今後の値動きを考える一助としましょう。

過去との共通点

リーマン・ショック後、高騰した失業率に対処するためにFRBは利下げを繰り返しました。

2007年7月には5.25%あった政策金利が、翌2008年12月には0.25%にまで引き下げられています。

2015年12月に0.5%へ利上げされるまで、実に7年もの間歴史的な低金利政策が続けられてきました。

こうした低金利状況は、前回のサブプライム問題の際と状況はよく似ています。

ぎりぎりまで金利を下げて銀行が融資しやすい(企業・個人が金を借りやすい)状況が生まれたことでバブルが発生し、弾けて恐慌へつながったのがサブプライム問題でした。

また、利上げがすでに予告されている点も過去と共通しています。

FRBも利上げの影響が過度に出ることは避けたいので、イソップ物語に出てくるウソつきの羊飼いのように「利上げをするぞ!」と強めに言ってから小出しに利上げを実施するわけです。

市場もそのことを織り込み済みですから、大きなショックは起こりません。

過去との相違点

まず、政治状況が大きく異なります。

オバマ前大統領が就任したのは2009年で、すでにサブプライムローン問題やリーマン・ショックが発生した経済的な混乱期でした。

今回のトランプ大統領が就任した2017年1月の時点では、まだ利上げによる景気後退は確認されていません。

新大統領は積極的な経済政策や規制緩和を約束しており、株価の上昇はしばらく続くのではないかとされています。

その一方で政策の実現に時間がかかるために、相場上昇の勢いが弱まるのではないかとの観測もあります。

参考:米国株は下落、大統領就任式前に警戒ムード(ロイター)

また、アメリカでは低金利政策とともに長らく「量的緩和策」をとってきました。

政策金利の引き下げによってお金が市場に出回りやすい状況を間接的に作り出すのが低金利政策であれば、量的緩和策は直接FRBが市場に出回るお金の量を増やす政策です。

この量的緩和策は、過去のITバブルやサブプライム問題の際の利上げの時には実施されていませんでした。

量的緩和策によってお金の量が増え、しかもアメリカの金利は低いということで、増えたお金は比較的金利の高い海外(日本含む)へ流れ出していました。

しかし、量的緩和策は、2014年10月の時点で終了します。これによって、大量のお金が海外からアメリカに戻ってきています。

さらに利上げの影響が加わることで、ドル高傾向が一層強まるのではないかとも考えられています。

まとめ

利上げによって、理論的にはドル高・円安、そして日米とも株価下落が起こるはずです。

しかし、過去の事例を見る限りでは必ずしも理論通りの値動きにはなっていません。

特にITバブルの際には利上げ→好景気がしばらく続く→ドル安・円高なのに日米とも株価上昇→バブル崩壊→ドル高・円安で日米とも株価下落となっています。

利上げが直接為替や株価に影響するのではなく、景気の後退を挟んで間接的に影響する形です。

2017年初頭の相場は、トランプ大統領の経済政策の効果を織り込むのであれば、ドル高・円安の株高傾向が続くと考えられます。

これに対して利上げが市場の予測よりも早いペース、大きな幅で行われるようなことがあれば、過去の事例からしてドル安・円高になると考えられます。

どのようなシナリオであったとしても、市場の着地点と現状どの場面まで来ているのかを常に意識する必要があるでしょう。

マネフルFX編集部 斉藤
専業トレーダー。月間最高利益2000万円。2007年にFXをスタート、CFD、日経225先物オプションなども取引する。一日に数回取引するデイトレードと長期のスイングトレードを得意とする。
LINEで送る
Pocket

記事下

2017年版!最強FX口座ランキング

-ファンダメンタル分析

Copyright© マネフルFX|FX初心者の入門サイト , 2017 AllRights Reserved.