ロスカットは、含み損で資産が全てなくなってしまう前に強制決済してくれる仕組みです。
しかし、ロスカットがあるから必ずしも安全という訳ではなく、値動きが急激な場合には強制決済が間に合わないで借金を抱える可能性もあります。
「ロスカットされるまで耐える」のではなく、「ロスカットされないよう自主的に損切りする」ことが重要です。
この記事では、FXをこれから始めよう、あるいは始めようかな?と考えている方に、超重要なキーワード「ロスカット」についてご説明します。
ロスカットとはどういう意味?
ロスカットは、損失の拡大を防ぐため、証拠金維持率(有効比率)が一定を下回ると保有しているポジションの全てを強制決済するシステムです。
急激に相場が変動した際に受ける損失をなるべく抑えるための仕組みです。
FX(外国為替証拠金取引)は、もともと元本保証されていません。
レバレッジを大きくかけることで、ばく大な利益を上げる可能性がある代わりに、どこまでも(証拠金の額を大きく超えて)損失を被る可能性があります。
この場合、預け入れた証拠金を全額失うばかりか、さらに損失額分のお金を支払わなくてはいけません。
それではいけないので、ある程度の損失が出た段階で自動的にポジションの一部または全部を強制決済することで、損失が一定額以上まで膨らむことを防ぎ、最低限の資金を残すことができます。
この仕組みがロスカットです。
証拠金維持率(有効比率)の計算方法
証拠金維持率は次の計算で出すことができます。
証拠金維持率 = 有効評価額 / 必要証拠金 × 100(%)
※有効評価額:資産合計 + 評価損益
※必要証拠金:1Lotあたり必要証拠金 × Lot数
計算式となると難しそうですが、多くのFX会社では証拠金維持率などの状態が一目で確認できるようになっています。
例えば、DMM FXの取引ツールだと、画面上段に「証拠金維持率」「建玉可能額」「純資産」などが一覧で表示されています。
必要証拠金(必要保証金)の計算方法
必要証拠金とは、保有しているポジションを維持するために必要な資金額のことです。
必要証拠金の計算式は次のようになります。
ドル/円・クロス円の通貨ペアの場合 :
判定レート × 1万通貨 × 4%
ドル/円・クロス円以外の通貨ペアの場合:
第1通貨/円の判定レート × 1万通貨 × 4%
例えば、判定レート(米ドル/円)= 100.00円のとき、
100.00円 × 1万通貨 × 0.04 = 40,000円
が必要証拠金となります。
必要証拠金も、FX業者の取引ツールで簡単に確認することが可能です。
ロスカット率とは?
会社ごとに、ロスカットする基準を定めた「ロスカット・ルール」が存在します。
預け入れた証拠金の金額に対し、どこまで損失が出たら(有効比率が一定を下回ったら)自動的にロスカットを行うかというルールです。
このロスカット基準を、ロスカット率(ロスカット値)と言います。
いくらになったらロスカットされるか計算方法が知りたい
ロスカットのルールだけ理解していても実用的とは言えません。
トレード中はポジションの数や損益は常に変わるので、トレーダーは「あとロスカットまでどのくらいだろう?」と、具体的な数字・金額が知りたくなるはずです。
そのための計算方法を解説します。
ロスカット基準額の計算方法
基本的にほとんどのFX会社が、「必要証拠金を何%下回ったらロスカット」というルールです。
言い換えると、「レバレッジ取引は、最低限の資金を口座に残しておかなければ続けることができない」とも言えます。
この「最低限の資金」のことをロスカット基準額と言います。
このロスカット基準額の計算式は次の通りです。
ロスカット基準額 = 建玉必要証拠金 × ロスカット率
例えば、建玉必要証拠金が50,000円、ロスカット率が50%の場合、
50,000円 × 0.5 = 25,000円
がロスカット基準額となります。
あといくら含み損が増えたらロスカットされるか知りたい
含み損を耐えている時に、あとどれだけ損が増えたらロスカットされるのか気になりますよね。
ロスカットまであとどれだけの金額耐えられるかは次の計算で出せます。
ロスカットまで耐えれる金額 = 含み損を入れた現在の口座資産 - ロスカット基準額
例えば、ロスカット基準額が25,000円、今の口座資産が30,000円の場合、次のようになります。
30,000円 - 25,000円 = 5,000円
が耐えれる金額です。
そして次に、あと何pips逆行したらロスカットされるかの計算方法です。
ロスカットされるpips = ロスカットまで耐えれる金額 / 1pipsで動く損益
ロスカットまで耐えれる金額が5,000円でドル円を1万通貨持っていた場合、
50pips = 5000円 / 100円
となり50pips逆行するとロスカットされることになります。
(ドル円1万通貨の損益は1pipsにつき100円)
ロスカット・レバレッジ・証拠金維持率のシミュレーター
FX会社によってロスカットルールが違うので、なるべく自分が使っているFX会社のシミュレーターがベストです。
しかし、他社のシミュレーターでも同じロスカットルールを採用しているところであれば概算程度はできます。(必要証拠金が多少違うため)
追証ライン | ロスカットライン | 公式サイト | |
---|---|---|---|
DMM FX | 100% | 50% | |
GMOクリック証券 | |||
外為ジャパン | 60% | ||
FXプライムbyGMO | 80% | ||
みんなのFX | なし | 100% | |
セントラル短資 |
例えば、GMOクリック証券のシミュレーターは、とても分かりやすく作られていて便利です。
計算できる項目は以下の通りです。
- ロスカット発動レート
- ロスカットが発動する証拠金維持率と実効レバレッジ
- 追証発生レート
- 追証が発生する証拠金維持率と実効レバレッジ
- 取引可能最大数量
- 注文時点での実効レバレッジ
また、計算されたロスカット発動レートや追証発生レートを「決済レート」の箇所に入力することで、その時の損失額も分かります。
この損失額は、ロスカットまで耐えられる金額とほぼ同額です。(スワップ損益が考慮されていないため)
ロスカットされるpipsは、「売買レート - ロスカット発動レート」で計算できます。
安全な証拠金維持率の目安は?理想と適正
証拠金維持率とレバレッジの関係
ロスカットまでの余裕が知りたいとき、手っ取り早いのは取引ツールで証拠金維持率を見ることでしたが、実効レバレッジという倍率でも判断できます。
この実効レバレッジと、よく耳にする最大レバレッジは別物です。
最大レバレッジ
よくFX会社のサイトで、「ウチはレバレッジ25倍!」と謳っているものは最大レバレッジと呼ばれます。
(国内のFX会社は、ほとんど最大レバレッジ25倍です)
これは「本来の取引額」と「必要証拠金」の倍率です。
実効レバレッジ
実効レバレッジとは、「本来の取引額」と「有効評価額(口座資産+評価損益)」の倍率です。
どちらもリアルタイムのポジションの損益から残りの資金を割り出し、本来の取引額との割合に表したものなので、実効レバレッジもロスカットの判断に使えます。
証拠金維持率の計算式と比べてみましょう。
証拠金維持率(%) = 有効評価額 / 必要証拠金 × 100(%)
実行レバレッジ(倍) = 本来の取引額 / 有効評価額
※本来の取引額 = 判定レート × 取引数量
※有効評価額 = 資産合計 + 評価損益
※必要証拠金 = 1lotあたりの必要証拠金 × lot数
実効レバレッジは上記の計算式を使って自分で計算できますが、証拠金維持率のように取引ツールでサクッとチェックできた方が便利です。
しかし、取引ツールで実効レバレッジが提供されているFX会社は限られます。
例えば、外為オンラインでは口座状況パネルに分かりやすく表示されています。
ロスカットまでの証拠金維持率と実効レバレッジの動き
実効レバレッジと最大レバレッジは、どちらも有効評価額(口座資産 + 評価損益)で増減しますが、次の点が異なります。
- 証拠金維持率は、100%以上かつ高いほど安全
- 実行レバレッジは、最大レバレッジ以下かつ低いほど安全
口座資産を仮に10万円として、ロスカットまでの証拠金維持率と実効レバレッジの動きをシミュレーションしてみました。
現在の評価損 | ロスカットまで 耐えられる評価損 | 証拠金維持率 | 実行レバレッジ |
---|---|---|---|
0円 | -80,000円 | 250% | 10倍 |
-10,000円 | -70,000円 | 225% | 11.11倍 |
-20,000円 | -60,000円 | 200% | 12.50倍 |
-30,000円 | -50,000円 | 175% | 14.29倍 |
-40,000円 | -40,000円 | 150% | 16.67倍 |
-50,000円 | -30,000円 | 125% | 20倍 |
-60,000円 | -20,000円 | 100% (追証発生) | 25倍 |
-70,000円 | -10,000円 | 75% | 33.33倍 |
-80,000円 | 0円 | 50% (強制決済) | 50倍 |
安全な証拠金維持率の目安!理想と適正
まず、トレード手法ごとの目安となる実効レバレッジは、スキャルピングが15〜20倍、デイトレードが5〜10倍、スイングトレードが3〜5倍程度が適切だと思います。
これをもとに、トレード手法ごとの実効レバレッジ目安と証拠金維持率の目安をまとめました。
実効レバレッジから証拠金維持率が知りたい場合は、以下の計算式で算出できます。
証拠金維持率 = (本来の取引額 / 実効レバレッジ)/ 必要証拠金 × 100
※本来の取引額 = 判定レート × 取引数量
※実行レバレッジ(倍) = 本来の取引額 / 有効評価額
※有効評価額 = 資産合計 + 評価損益
※必要証拠金 = 1lotあたりの必要証拠金 × lot数
ロスカット基準額はFX会社によって違う
ロスカット基準額・ロスカット率は会社によって異なります。
FX会社によってロスカット率の数字自体が異なりますし、一律なのか、ある程度投資家が変更できるか、といった違いもあります。
また、ロスカット前には事前のアラート通知や追証(マージンコール)がありますが、これもFX会社ごとに基準が異なります。
取引業者名 | ロスカット・ルール |
---|---|
GMOクリック証券 | 証拠金維持率が必要証拠金の50%を下回った場合。 また、100%を下回るとアラートが出されます。 |
DMM.com証券 (外為ジャパン) | 証拠金維持率が60%以下となった場合。 |
YJFX! | 【外貨ex】 証拠金維持率が50%を下回った場合。 また、100%を下回るとアラートが出されます。 【C-NEX】 証拠金維持率が100%になると、すべてのポジションを強制的に決済。 また、150%でロスカットアラート、120%で新規注文不可となります。 |
ヒロセ通商 | 有効比率が必要証拠金を下回った時点で、すべてのポジションを強制決済。 また、200%を下回るとアラートが出ます。 |
FXプライム byGMO | 証拠金維持率が80%を下回る場合、すべての未決済ポジションを強制決済。 また、100%を下回る場合新規注文と新規注文訂正が不可となる。 |
外為オンライン | 【L25 / L25mini コース】 取引証拠金が必要証拠金の20%を下回った場合。 【L25Rコース / L25Rminiコース】 取引証拠金が必要証拠金の100%を下回った場合。 |
追証発生後にロスカットされる時間はいつ?
先ほどまでのロスカットは別に、口座維持率が一定を下回り追加証拠金(追証)が発生した状態で追証の解消をしないとFX会社から強制的にポジションを決済させられてしまいます。
その場合は、先ほど説明したロスカット基準額を下回らなくても強制的にロスカットされることになります。
強制ロスカットされる時間は各FX会社により異なりますが、多くのFX会社で、追証が発生した翌営業日の早朝メンテナンス明けに強制決済されます。
追証が発生すると、FX会社から通知のメールが来ますので、そのメールを見逃さないようにしましょう。
ほとんどの場合、追証通知メールの中に強制決済時間も記載されています。
ロスカットについてよくある質問
ロスカットされたらどうなる?取引は続けられるの?
自動的にロスカットされるということは、証拠金がある程度目減りしてしまったことを意味します。
しかし、証拠金がゼロになってしまったわけではないので、レバレッジ規制の上限25倍までは取引を続けることが可能です。
もちろん、できればロスカットは経験しないに越したことはありませんが、ロスカットされたからそこですべてが終わりだ!ということではありません。
ただ、FX業者によっては取引制限が解除されるまで多少の時間がかかる場合もあります。
ロスカット率は高い方がいいの?低い方がいいの?
ロスカット率が高い場合、低い場合で一長一短がありますので、どちらが良いのか一概には言えません。
ロスカット率が高い場合
- 損失が出た場合も最小限に食い止められる
- ロスカット執行までが比較的早いので「もう少し我慢すれば相場が反転したのに…」と悔やむケースも
ロスカット率が低い場合
- 損失が膨らんでも、それを確定させずに耐えることができる
- 一度のロスカットで大きな損失となり、取引を続ける余力が実質的に残っていない…というケースも
両建てでロスカットされることはあるの?
両建てとは、同じ通貨ペアで買いと売り両方のポジションを持つことです。
損切りを先延ばしする理由(損失の固定)で両建てをする人が多いです。
売り買い同じ枚数の建玉を保有していれば、基本的にどれだけ相場が暴落してもそれ以上含み損が大きくなることはありません。
参考記事FX両建てナンピン必勝法は嘘!両建てにメリットや意味がない理由
そのため、両建て状態でロスカットされることはほとんどないのですが、必ず安全という訳ではありません。
FX業者によっては暴落・暴騰時にスプレッドが大きく広がることがあります。
スプレッドが数百pipsなど異常値のような拡大をした場合は、両建てをしていてもロスカットされる可能性があります。
そのため損切りを徹底できるようにルール作りをしたほうが無駄な心配をする必要がありません。