移動平均線はチャート分析のテクニカル指標の中でも、とてもシンプルで多くの投資家が参考にする指標です。
使い方は、FXでも株でも仮想通貨でも基本的に同じなため、一度覚えてしまえば他の投資対象でも利用することが可能です。
この記事では、移動平均線の使い方や手法を解説します。
その他のテクニカル指標については次の記事で解説しています。
テクニカル分析の種類・基本編|FXチャート・為替レートの見方まとめ
単純移動平均線(SMA)とは?
単純移動平均線は、移動平均線の中でも最もポピュラーなトレンド系テクニカル指標です。
SimpleMovingAverageの頭文字をとってSMAとも呼ばれています。
その算出式は以下のようになります。
単純移動平均線=P1+P2+.....Pn / n
P:平均される価格
n:算出の対象とする期間
例えば、5日移動平均線であれば、過去5日間の終値の平均値となります。
移動平均線でよく利用されている期間に200日、21日、5日などが挙げられます。
この数値は営業日ベースで200日=1年、20日=1か月、5日=1週間の期間を表します。
他にもよく利用される期間としては次のようなものがあります。
ー | 設定期間 |
---|---|
一般的な期間 | 5、20、200 |
J・ウェルズ・ワイルダー提唱 | 7、14、21 |
一目均衡表 | 9、17、26 |
エリオット波動論 | 5、8、13、21、、 |
移動平均線のメリットとデメリット
移動平均線のメリット
- 日々の細かな変化に左右されることなく、中長期的な相場の方向性を判断することができる。
- 期間を短くとれば短期トレンドが抽出でき、変化に素早く対応することができる。
- 移動平均線自体が支持線・抵抗線として機能する場合も多い。
移動平均線のデメリット
- 現行の価格レートや変動とのタイム・ラグがある。
- 期間の設定が短くなると売買シグナルが早く出るが、騙しが多くなる。
- 期間が長いと騙しは少なくなるかわりに売買シグナルが出るのが遅くなる。
移動平均線の売買シグナル
ゴールデンクロスとデッドクロス
長期移動平均線を短期移動平均線が下から上に突き抜けることをゴールデンクロスと言い、買いの目安とされています。
逆に、上から下に突き抜けることをデッドクロスと言い、売りの目安とされています。
FX・株のゴールデンクロスとデッドクロス|見方や設定・だまし回避の方法
この移動平均線のゴールデンクロス、デッドクロスで売買する手法はトレンドフォローの代表的なものです。
上のチャート画像のようにトレンドが強く出ている場合は、そのまま流れに乗って大きな利益を得ることができます。
しかしトレンドが出ていないレンジ相場では騙しが多く発生してしまいます。
上のチャート画像のようなレンジ相場になってしまうと、ゴールデンクロス、デッドクロスでトレードしていたのでは損切りばかりになってしまいます。
移動平均線のようなトレンド型テクニカル指標は、トレンドの無いレンジ相場にめっぽう弱くなってしまうので、今の相場がトレンド相場なのかレンジ相場なのかを見極めて使用する必要があります。
レンジ相場では、相場の買われすぎ、売られすぎを表示するオシレーター系テクニカル指標がオススメです。
オシレーター系テクニカル指標には代表的なもので、RSIやRCI、ストキャスティクスなどがあります。
パーフェクトオーダー
次に、移動平均線のパーフェクトオーダーについて説明します。
パーフェクトオーダーとは短期、中期、長期の移動平均線が同じ方向に順番通りに並ぶ状態の事を言います。この時、チャートは強いトレンドを形成している場合がほとんどです。
例えば、上昇トレンドでは次の図の様に3本とも右肩上がりで上から短期・中期・長期の順番で並び、下降トレンドではその逆となって右肩下がりで上から長期・中期・短期の順番に並びます。
上のチャート画像の、緑丸印の地点から、上昇トレンドのパーフェクトオーダーの状態になっています。
緑丸印付近で短期と中期の移動平均線(以下MA)が長期のMAをゴールデンクロスで上抜けています。結果的にここで気付いてエントリーしても十分な利益が期待出来る場面です。
さらにこの付近では小さな押し目として中期MAにタッチしてからまた上昇している様に見えるのでリアルではストップ覚悟でエントリーしてみてもいい部分と言えるのではないでしょうか。
また赤丸のゴールデンクロスでのエントリーも理想ではありますが、頭と尻尾はくれてやれと言う様に赤丸の中は頭部分と考えより確実な緑丸でエントリーがセオリー通りとなるかもしれません。
決済は青丸付近でいいと思います。長期MAを短期MAと中期MAが上抜けた時にエントリーしたので決済はその逆で長期MAを短期MAと中期MAが下抜けたところとなるでしょう。
ただ個人的には青丸のその少し前、長めの陰線が出たところ(長期MAタッチ部分)で決済しそうです。
指数平滑移動平均線(EMA)とは?
ここまで説明したものはSMAと呼ばれる最もシンプルな移動平均線です。
他にも、直近のレートの重要度を高めた「指数平滑移動平均(EMA)」もよく利用されます。
ほとんどのFX会社のチャートではSMAとEMAの2種類が使用できるようになっています。
EMAはSMAよりも直近の値動きを強く反映します。
そのため、よりトレンドの初動を掴むことができますが、そのぶん騙しにあう可能性も高くなってしまいます。
上のチャート画像はSMA(赤・期間21)とEMA(緑・期間21)を同時に表示させたものです。
同じ設定期間でもEMAの方がよりローソク足に沿った位置にいることがわかります。
どちらの移動平均線を使用するかは好みにもよるので、どちらも使用してみて気に入った方を使用してみるのをオススメします。
普段、私はSMAの方を使用しています。
またSMA、EMAどちらの場合でも、テクニカル指標の利用方法はここまで説明したのと同じです。
EMAを12本表示させたGMMAとは
EMAをさらに細かい期間で12本表示させたGMMAも投資家から人気のテクニカル指標です。
6本の短期線と6本の長期線をそれぞれ表示することで、トレンドの押し目買い、戻り売りが非常にわかりやすくなります。
レンジ相場のもみ合いだとGMMAは収縮し、トレンドが出始めるとそれぞれの移動平均線が順番に広がり始めます。パーフェクトオーダーをより見やすくしたような形ですね。
GMMAについては以下の記事で詳しく解説しています。
移動平均線+平均足+MACD+RCIを組み合わせた手法
移動平均線(以下MA)を主体に平均足とMACD、RCIの組み合わせでエントリーポイントを見つけやすくする手法です。
MAは20本と8本を使用して、ローソク足ではなく平均足を使ってトレンドを把握します。そしてMACDとRCIでエントリータイミングを計ります。
トレンドの判断方法は、
- 平均足がMA20の上で推移する時は上昇相場、下で推移する時は下降相場
- MACDがゼロラインより上にある時は上昇相場、下にある時は下降相場
エントリー、利益確定タイミングは、
- MACDが上昇相場を示している場合、RCIがシグナルを上抜けた場合にロング
- MACDが下降相場を示している場合、RCIがシグナルを下抜けた場合にショート
- MACDがゼロラインを超えたらで平均足と同じ方向にエントリー
- MACDとRCIのダイバージェンス確認でエントリー
- MA8を平均足が割り、それまでのトレンドの色と違う色になったところで利益確定
ダイバージェンスについては次の記事で詳しく解説しています。
ダイバージェンスとは|オシレーター系を使ったトレンド転換の見つけ方
(図1・ポン円・1時間足)*背景のマス目は1つ約55pips
図1では主な4か所のエントリーポイントを示しました。4つのエントリーポイントについての解説します。
- エントリールール1で説明した通りのポイントです。RCIとシグナルのゴールデンクロスを確認してからのエントリーでも十分利益が取れる場面であり最大で約150pips取れるエントリーポイントでした。
- エントリールール2で説明した上記の逆パターンです。これも最大で約100pips取れるエントリーポイントでした。
- この場面はトレンド転換の場面となりますが最大で約50pipsくらい取れるのではないでしょうか。ただ、早めの決済をしなければ、同値撤退やストップにかかってしまう場面です。
- MACDとRCI両方共にダイバージェンスになっていますが、陰線を確認してからショートでエントリーするとストップにかかりそうな場面です。ストップを回避出来た場合は最大で約100pipsくらい取れそうな場面です。
最後に、どうしてこれらのテクニカル指標を選んだかという説明です。
MA20は、一般的に移動平均線の基本とされている設定値で、為替レートの反転やトレンドの分岐点になることが多いラインです。
ボリンジャーバンドなどのテクニカル指標も、設定の基準として期間20の移動平均線を採用しています。
MA8は、強いトレンドが出た場合にローソク足がMA8に沿って動く事が多くなります。
参考までに15分足のチャートでMA20とMA80(1時間足のMA20に相当)、MA320(4時間足のMA20に相当)を表示させているものを使う事もあります。
次にどうしてMACDなのか?ですが、シンプルにこれを参考にしている方が多いのではないかと思うからです。
多くの人が見ているテクニカルを参考にする事で大きい流れに乗れるのではないかと考えます。
RCIをMACDに重ねる理由は、視覚的なわかりやすさと、良いエントリーポイントを見つけられる事が多いからです。