"ジェイコム男"ことBNFの生き様に学ぶ投資家人生
投資の世界で「神」と呼ばれる伝説のトレーダー・BNF氏。
BNFさんは「ジェイコム男」の異名を持つ、株取引により若くして莫大な富を築き上げたカリスマ投資家です。
もともとは普通の学生だった彼が、どのようにしてカリスマ投資家になれたのか。
それを探ることは私たち投資家として大きな関心事であるとともに、今後の投資活動において様々なヒントを与えてくれることでしょう。
今回は、このBNFさんにスポットを当て、彼の投資家としての歴史やトレードのスタイル、エピソードなどを紹介するとともに、最近表舞台にあまり現れないBNFさんの現在の状況も追ってみました。
BNFの経歴と投資家としての歴史
はじめに、投資家BNFさんの経歴や投資家としての歴史などをご紹介していきます。
大学生で株取引をスタート
BNFさんは1978年、千葉市に生まれました。
東京の私立大学に3年生として在学していた2000年に、お年玉とアルバイトで貯めた160万円を元手資金として株取引を始めたのが彼の投資家としての始まりです。
その方法は、当時やっと世の中に広まり始めたネットトレードでしたが、当時はまだ黎明期で教科書的なものはなく、ネット上でもノウハウを扱っているサイトは今ほど多くありませんでした。
そのような環境で、右も左もわからずに飛び込んだ投資の世界でしたが、BNFさんは当初、日々コツコツと株のチャート画面に向き合い、その値動きや規則性を覚えながら自分のトレード手法を開発していったそうです。
また、初めはデイトレだった手法をスイングトレードに転換し、次第に勝てるようになっていったとインタビュー等で語られています。
BNFさんはそのように勉強や工夫を重ねながら、相場の先読みや順張り・逆張りの巧みな使い分けを身に付けていき、ITバブルの崩壊やリーマンショックなど多くの難局を乗り越え着実に利益を上げていきます。
ジェイコム株大量誤発注事件で20億円の利益
投資家"BNF"の名を一躍有名にしたのが、2005年に起きた「ジェイコム株大量誤発注事件」です。
この事件は、東証マザーズ市場に新規上場したジェイコムの株式について、みずほ証券が誤発注し市場を混乱に陥れたという大騒動。
2005年12月8日午前9時27分56秒、みずほ証券の担当者が「61万円1株売り」の注文を「1円61万株売り」と間違ってコンピュータに入力してしまいました。
担当者は、売り注文を出してから誤りに気付いて取り消し注文を送りましたが、東京証券取引所のコンピュータプログラムに欠陥があり、この取り消し注文は受け付けられず・・・。
このため、この大量の売り注文によりマーケットは大混乱に陥り、慌てて投げ売りをする投資家も出てくる始末。
誤発注からわずか2分後の9時30分には、ジェイコム株はストップ安の57万2,000円に急落してしまったのです。
みずほ証券は事態収拾のため、誤発注に対する反対売買に乗り出しましたが、9万株余は間に合わず買い注文が成立してしまいました。
しかし、みずほ証券の反対売買により株価は反転上昇、9時43分にはストップ高をつけるに至ります。
そして、間に合わなかった買い注文成立分は、翌日以降、事件発生の直前に寄りつきつつあった価格を参考に、1株91万2,000円での買戻し(現金による強制決済)を行う方向で裁定されました。
BNFさんはこの事件が発生した時、いち早く誤発注だということに気付き、ストップ安で7,100株のジェイコム株を取得し同日中にそのうちの1,100株を売り抜けました。
残りの6,000株はそのまま持ち越し、翌日以降みずほ証券が現金決済を行ったことにより、20億3,500万円の利益を上げたのです。
ストップ安でも1株57万2,000円のジェイコム株を7,100株買うとなると、40億円を超える資金が必要となります。
また、卓越した決断力や実行力がなければ、超短時間のうちにこのような素早い行動はとれません。
さらに、同日にすべて売り抜けるのではなく、そのほとんどを持ち越したことが、彼には凡人に真似ができないほどの先見の明があることを物語っています。
事件当日の売買益は公表されていないようですが、BNFさんはこの素早い決断と果敢な行動で、強制決済分だけで約20億円超を稼いだことになります。
不動産投資にも手を広げる
投資家として、BNFさんは株だけでなく不動産投資も行っています。
2008年10月には、秋葉原駅前にある地下1階・地上10階建ての商業ビル「チョムチョム秋葉原」を90億円程度で購入しました。
秋葉原のビルを取得したのは資産の分散を行うためで、転売益や家賃収入を目的とするものではなかったようです。
そして2018年にBNFさんはこのビルを売却。
売却先は、私募の投資法人である「東京海上プライベートリート投資法人」で、売却額は120億円から130億円との噂もありますが、日経新聞には145億円と掲載されました。
こちらのビル購入時の賃貸利回りは年7%程度で、年間賃料は約6.3億円程度が期待できる物件でした。
一方、ビル売却当時の周辺賃料は1坪あたり約3.5万円が相場で、延べ床面積は約1512.5坪だったことから、家賃収入も年間6.3~6.4億円と購入時からあまり変化なく入っていたはずです。
このことから、BNFさんが得た購入後10年間の賃料収入は約63~64億円、ビルの売却益が30~55億円ほどになるとされています。
BNFのトレードスタイルとエピソード
次に、投資家BNFさんのトレード手法や彼にまつわるエピソードの数々をご紹介していきます。
BNFのトレードスタイル
気になるBNFさんのトレードスタイルですが、1日~1週間程度のスイングトレードが中心です。
また、状況に応じて順張りと逆張りを使い分けているようです。
ご自分でも、「世間ではネット投資家というと、みなひと括りにデイトレーダーと呼ぶ傾向があるけど、僕の投資スタイルは1日~1週間程度で売買するスイングトレードです。」とおっしゃっています。
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そして、BNFさんの得意とする手法が「順張りスイング」と「逆張りスイング」の2つ。
ここからは彼のトレード手法の詳細について解説していきます。
【順張りスイング】
相場上昇の可能性が高い日に、各業種の監視銘柄を観察していきます。
監視銘柄には主力株が多いようですが、その株が上がる時は関連銘柄も連れ高になるため、出遅れた関連銘柄に狙いを定め、買いで勝負します。
結果的に、これらの関連銘柄もつられて上がるため、利が乗っていくという手法です。
監視銘柄だけでも 600~700 銘柄くらいはあるそうです。
【逆張りスイング】
彼の行う「逆張りスイング」は、25日移動平均乖離率を見て、大きく下げている銘柄を買っていく短期逆張りです。
判断基準は、以下のものを使うそうです。
- 25日移動平均線からの乖離率
- 相場の雰囲気
- 出来高
- ボリンジャーバンド
【損切り】
BNFさんは損切りの早さに定評があります。
株価が自分の想定より下がった場合は、絶対に上がるまで待つことはせず、早めの損切りに徹しているのが特徴です。
BNFのエピソード
【生活に関するエピソード】
投資家というと自由に暮らし、海外旅行などに行ったりしているイメージがありますが、なんとBNFさんは海外旅行に行ったことがないそうです。
旅行中の相場が気になることと、その間の稼ぎを逃してしまうのが惜しいというのが、旅行に行かない理由なんだとか。
また、外車数台を乗り回しているのかと思いきや、高級車は持っていないそうで、移動は自転車を使い、身の回りのものは100円ショップで買うとのこと。
食事も信じられないほど質素で、昼食は主に「カップラーメン」、夕方は散歩に出かけた時に「かけそば」を食べるのだそうです。
昼食にカップラーメンを食べる理由は、集中力維持のため、あえて満腹にならないようにしているのだとか。
そんなBNFさんが今までで大金を使ったのは、両親へのプレゼントにトヨタのクラウンマジェスタを買ったこと、そして、自分の住居である港区の白金高輪にある高層マンションの最上階1戸を購入したことだそうです。
大富豪でありながら、その質素で慎ましい生活ぶりには驚くばかりですね。
【投資に関するエピソード】
BNFさんは以前、あのソフトバンクの孫正義社長から資産運用をしてほしいと直々に頼まれたそうですが、「他人の金は動かしたくない」という理由で断ったんだとか。
そしてBNFさんは不動産投資も行っていますが、その理由が、「株取引の運用額が大きくなり、大量の注文を入れるとマーケットに大きな影響を与えてしまう」ため、株以外の投資も行っているとのことです。
どちらも規格外すぎてただただ驚くばかりですが、「伝説の投資家」として語られるにふさわしいスケールのエピソードですね・・・!
【リーマンブラザーズ・ディスプレイ破壊事件】
2008年のリーマンショックの際、当初はリーマンブラザーズが救済されるという見方が強く、BNFさんもリーマン株を10億円分保持し続けていたとのことですが、最終的にリーマンブラザーズは救済されずに倒産してしまいました。
その時は、さすがのBNFさんも怒りのあまりディスプレイを2枚叩き壊したんだとか・・・。
BNFの現在の状況
昔はちょこちょこメディアなど表舞台にも登場していたBNFさんですが、近年はあまり姿を見せなくなっています。
そんなBNFさんの現在の状況や、投資の近況はどうなっているのかを調べてみました。
BNFの資産状況
BNFさんの資産額の推移は、次のようになっています。
西暦年 | 資産額 |
---|---|
2000年 | 164万円 |
2001年 | 6,100万円 |
2002年 | 9,600万円 |
2003年 | 2億7,000万円 |
2004年 | 11億5,000万円 |
2005年 | 80億円 |
2006年 | 157億円 |
2007年 | 185億円 |
気になるのは「現在の総資産がどれくらいになっているのか?」
という部分だと思いますが、BNFさんは自分の資産を公開していないため、推計するしかありません。
投資家BNFさんの総資産は、2017年時点では、不動産が300~350億円、現金・債権が50~100億円、株式が50~100億円で総計400~500億円と推測されていました。
現在はその時点より増えて、1,000億円とも、2,000億円に近いなどの噂がありますが、真相は定かではありません。
BNFの投資活動状況
現在のBNFさんは、投資家として株取引以外に不動産投資も行っています。
エピソードの部分でもご紹介しましたが、その理由は、リスク分散目的のほかに、「運用額が大きくなり、大量の注文を入れると株式市場に与える影響が大きくなってしまったため」ということです。
西暦年 | できごと |
---|---|
2008年 | 秋葉原に商業ビルを購入 |
2011年 | 秋葉原に2件目の商業ビル「AKIBAカルチャーズZONE」(敷地面積800平方メートル)を170億円(推定)で購入 |
2013年 | 渋谷センター街に土地購入。3階建ての商業施設を建築。 |
2018年 | 2008年に購入した商業ビルを売却 |
2019年 | 札幌市中央区で飲食店ビルの建設を計画 ・敷地面積:約38坪(126・46㎡) ・建物構造:地下1階、地上9階建ての鉄骨造(約30坪=101・44㎡) ・高さ:30・60m ・延べ床面積:約268坪(884・98㎡) |
BNFの私生活
2ちゃんねるでは、BNFさんは結婚して子供もいるという噂が流れ、ネット上でも既婚と書かれたサイトもありますが、こちらについてははっきりと確認されたわけではなく、今もなお詳しいことはわかっていません。
BNFの投資にまつわる名言集
カリスマ投資家のBNFさんは、投資にまつわる多くの名言を残されています。
ここでは、その代表的なものを紹介していきます。
実際の名言集
以下は、投資家BNFさんがインタビューなどで発言した内容です。
儲かったのは、実力ではなく単に時代のおかげ。すべては相場環境次第。
下げ相場では、コツコツ負けてドカンと勝つ感じで資産を増やした。
コツコツ勝ってドカンと負けるのではなく、その逆をいく点が、投資家としてBNFさんの凄いところですね。
最後には、恐ろしく速く注文が出せるようになった。
何も考えていないのに、腕が勝手に動く。
それを眺めていると、「この手は機械で人間の手じゃないのではないか」と思う。
ジェイコム株の初値予想は 100 万円位。
新規上場株は初日にチェックしているが、100 万円以下なら買いかなと思っていた。
67 万 2000 円の初値がついた時点で大量に買おうと思ったら、いきなり 57 万 2000 円のストップ安。
これは買いだと思った。100 万円くらいまでは上がるだろうと思った。
やはり、ほとんどの株を持ち越したのは、投資家として先見の明があったからでしょう。
お金を使うのは楽しくないし、あまり興味もない。
金の使い方がよく分からない。ある意味、ゲーム感覚で儲けたようなものだから。
株取引は楽しいと思わない。辛いだけ。
お金を稼いでも、画面上の数字が増えただけ。
仕事をするにしても、株関係は絶対にやりたくない。本も書きたくない。
頭の中が株だらけで、とにかく株から離れたいので経済番組も見ない。
こうして発言の数々を見ていくと、BNFさんは投資家として成功を収め大富豪になってからも、精神的にかなりの重圧を背負いながら投資活動を続けていることがわかりました。
まとめ
以上、カリスマ投資家・BNFさんの経歴やトレードスタイル、エピソードなどについてご紹介してきました。
巨額の資産を築き上げた伝説の投資家と聞くと、常に冷静沈着で鉄の意志を持つスーパーマン的な人間を想像してしまいます。
しかし、今回BNFさんの素顔を垣間見ることで、彼は決して天才やスーパーマンなどではなく、私たちと同じ弱さを持つ1人の人間だということがわかった気がします。
BNFさんの卓越したところは、その人間としての弱さに負けず、常に目的を持って相場と向き合い、値動きの法則や投資手法について勉強を積み重ね、体に覚えこませるよう努力を怠らなかったことにあるのではないでしょうか。
今回、幸運にも投資家・BNFさんの軌跡を辿ることができたことは、私たちの今後の投資活動において大変貴重な糧となるに違いありません。