世界の為替の起点ニュージーランド・ウェリントン市場
24時間取引ができるFXですが、オープンとクローズとなる起点の時間が設定されています。1日の起点となるのがニュージーランドのウェリントン市場です。
そして1日の外国為替市場の起点となる市場がニュージーランドのウェリントン市場とオーストラリアのシドニー市場がある「オセアニア市場」です。
実際には2つの市場のオープン時間は、
ウェリントン市場 | 4:00~14:00 |
---|---|
シドニー市場 | 6:00~16:00 |
ですが、9:00からは東京市場が始まりますので、FX界ではオセアニア市場とはNY市場が終わり、東京市場が始まるまでの間の時間の6:00~9:00(夏時間5:00~9:00)のことを指します。
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オーストラリア経済の特徴
オーストラリア連邦は日本のおよそ20倍の769万㎢という世界第6位の広大な面積を保有しながら人口規模では2424万人と世界51位、GDPは世界第13位の中規模国です。
オーストラリアの輸出品目構成は鉄鉱石や石炭、アルミニウムをはじめとする鉱産物が半分ほどを、小麦、羊毛、肉、乳製品などの農林水産物が1~2割ほどを占めていますのでオーストラリアの経済は一次産業市況や気象条件に左右されやすい傾向にあります。
オーストラリアの通貨は「オーストラリアドル(豪ドル)」、通称オージーです。
鉱産物などの資源の輸出が多いため、景気は資源価格が上昇すると景気が拡大します。
オーストラリアドルは鉄鉱石価格や石炭価格と連動するため、これらの価格が上昇すれば豪ドルも上昇しやすくなります。
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ニュージーランド経済の特徴
ニュージーランドの人口は世界122位の469万人、GDPは世界52位の2010億米ドルのいずれもシンガポールよりも少し下回る規模です。
ニュージーランドでは輸出の半分近くを乳製品、肉、羊毛、林産物、キウイフルーツのような果実類などの第1次産品が主要産業となっているため、天候や気象条件に左右されやすい傾向にあります。
ニュージーランドの通貨は「NZドル」、通称「Kiwi(キウイ)」です。
オーストラリアが鉄鉱石や石炭などの資源が中心であることに対してニュージーランドは農作物が中心で厳密的には「資源」がメインではないものの、NZドルは資源国通貨として認識されていて豪ドルと連動して動く性質があります。
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オセアニア通貨は中国経済の影響を受けやすい
オセアニア通貨などの資源国通貨は輸出割合の高い国の影響を受けやすい傾向にあります。
現在のオーストラリアの輸出先の1位は中国ですので中国の景気と豪ドルは深い関係にあります。
中国の経済が悪化するとオセアニア通貨も売られることになり、中国経済の影響をもろに受けやすい通貨でもあります。
2015年8月に中国経済の減速懸念が世界中を駆け巡りました。
背景には中国人民元の突然の切り下げがあり、中国のバブルがついにはじけるのではないかとの憶測が全世界に広がり、株も為替も全面安となりました。
豪ドルはその影響をもろに受ける形で8月24日の高値が89.16円、安値は81.97円まで下げて84.73円で引けています。
1日で7円以上も変動したということが豪ドルが中国経済に影響を受けやすいということを物語っています。
オセアニア市場の値動きの特徴
参加者が少なく流動性が低い
ニューヨーク市場が終了した後のオセアニア時間は参加者が極端に少なくなり流動性が圧倒的に低下します。
小動きに終始することが多い反面、ちょっとしたことで激しく為替が動きやすい時間帯でもあります。
ニューヨーク市場が終了し、9:00の東京市場が始まるまでの間は値幅の少ない小動きな状態になる傾向にあります。
週明けのオセアニア市場の特有の動き「窓開け」
土日が休みとなるFX市場ですが、週の起点となる月曜日の始値が金曜日の終値から離れたレートで始まることがあり、金曜日の終値と月曜日の始値が乖離して起こる「窓開け」相場が起こるのがオセアニア市場の最大の特徴です。
上のチャートでは2箇所の緑で囲んだ箇所でローソク足が隙間を開けていることが分かります。これが「窓」「ギャップ」と呼ばれるものです。
これは土日で為替市場が閉まっているときに値動きがあったために月曜日にオープンした時に値が飛んで起きた現象です。
為替市場は海外のほとんどの国も土日は取引が停止されていますが、中東やドバイでは休日が金曜日で土日が休みではない国もあるため、欧米諸国や日本の為替市場が停止している間にも取引が行われています。
また、大口の注文には土日でも注文を受け付ける会社もあるため、土日でも値動きがあるわけです。
このため、土日の間に為替市場に影響があるようなニュースがあった場合に月曜日に窓を開けて始まる確率が高くなります。
為替市場に影響があるニュースは事件や自然災害、経済不安などのニュースです。要人発言も混乱を避けて市場が閉まってから行われることもあるので発言の内容が月曜日の窓開けに現れることがあります。
FXは土日が休み!覚えておくべき取引時間や週末リスクなどまとめ
オセアニア時間で狙われやすいミセスワタナベ狩り
オセアニア市場は参加者が少なく流動性が低い時間帯ですが、この流動性の低さを狙って投機筋が仕掛けをしてくることがあります。
流動性の高い時間帯はヘッジファンドが大金を投じても為替市場に影響をもたらすことはできませんが、オセアニア時間では少ない金額でも為替を動かすことができ、一方的に為替を動かしてストップロスを巻き込んで利益を得ようとするストップ狩りが行われやすい時間です。
特に日本の個人投資家のストップロスを狙った動きはミセスワタナベ狩りと呼ばれています。
ミセスワタナベ狩りで記憶に新しいものがトルコリラ円の早朝のストップ狩りです。2018年3月頃から8月にかけて何回か早朝の急落があり、日本人投資家で相当な痛手を負った人も多いのではないでしょうか。
チャートは2018年5月23日のリラ円の急落時のチャートです。7:08分から急激にリラ円が下げはじめ、短時間で1円近くの暴落をしました。
この急落は日本人投資家のストップロスを巻き込み23円割れを狙った投機筋の売りと言われています。
シドニー市場のFXトレード手法
シドニーギャップ手法
オセアニア勢のみが参加しているシドニー時間の取引量が薄くなった時間の特徴を利用した投資手法です。
シドニー時間の価格変化は「シドニーギャップ」と呼ばれ、東京時間を迎えたときにシドニー時間の反対決済が入りやすくなる特徴を狙ってポジションを取ります。
トレード方法はシンプルなもので、NY市場終了時から東京市場開始までの時間で10pips以上動いた場合、9:00に動いた方向と逆にエントリーします。
利確と損切りの設定値は
- シドニー時間で10~20pips上昇(下降)した場合 → 利確・損切り = 10pips
- シドニー時間に20pips以上上昇(下降)した場合 → 利確・損切り = 上昇(下降)値の半分の数値
です。
買いエントリーの場合
①NY市場終了後から9:00までの間で19pips下降していますので買いエントリーの準備をします。
②9:00に買いエントリーをし、10pipsで利食いします。
売りエントリーの場合
①NY市場終了後、15pips上昇したため、売りエントリーの準備をします。
②9:00の東京市場開始と同時に売りエントリーをします。10pipsで利食いします。
オーストラリアの経済指標
RBAの政策金利発表
オーストラリアの政策金利は毎月第一火曜日の13:30(夏12:30)にオーストラリア準備銀行(RBA)が発表しています。
RBAでは2~3%のインフレ目標を設定してインフレ率が高ければ利上げ、インフレ率が低ければ利下げを行います。
豪ドルはFXトレーダーにはスワップ狙いの高金利通貨として人気があります。
注目の指標で平均で30pips程の変動幅を持った指標です。
特に利下げがサプライズになった場合は変動幅が大きくなりがちなので、豪ドルに投資している場合は注意が必要です。
2018年9月4日の政策金利発表は市場の予測通り政策金利が1.5%の据え置きでした。
RBAは声明文で中国経済がやや減速しており中国当局が金融緩和に乗り出していることや米国の通商政策がもたらす世界経済の不確実性について前回に引き続き言及しました。
一方でオーストラリア経済については堅調を維持するとの見通しや2018年上期の経済成長はトレンドを上回るペースとの見解を明らかにしました。
豪ドルは発表直後に79.88円から80.16円まで28pips上昇し、緩やかに上げながら80.42円で東京市場が終了しました。
オーストラリアでは8月に政治情勢に動きが見られ、首相が交代しています。
オーストラリアでは10年間で5回も首相が交代している状態なのですが、それでも景気拡大を続けているため、国内での不安が経済に与える影響は限定的だと見られていて、今後も豪ドルは中国経済や米中貿易摩擦のような外部要因によって左右されやすいと考えられています。
オーストラリアGDP
四半期ごとの3月、6月、9月、12月上旬の10:30(夏9:30)にオーストラリアの統計局が発表しており、1980年以降は資源の高騰により輸出額が上がっているため、右肩上がりに成長している状態になります。
ただし、オーストラリアの景気は輸出量の多い中国の景気に左右されやすいので注意が必要です。
経済の健康状態を測る重要指標ではありますが、為替に与える影響はあまりなく、FXトレーダーにそこまで注目されているわけではありません。
2018年6月6日に発表された第1四半期のGDPは前年比伸び率が約2年ぶりの高水準となり市場予測を上回りました。
これで景気後退を経験していない期間は27年目に入ったことになります。
発表後豪ドル円も反応して急伸しました。ただ、景気が減退する可能性もあるとの見方から延びは限定的となりました。
オーストラリア貿易収支
オーストラリアの貿易収支は毎月上旬の10:30(夏9:30)に統計局が発表しています。
輸出量が多いオーストラリアですが、豪ドル円のボラティリティがもともと高いために指標発表直後でもあまり大きく動くことはありません。
2018年5月3日発表の3月の貿易収支は15億3000万豪ドルの黒字で10か月ぶりの高水準となりました。資源輸出が引き続き好調のため貿易収支も高水準をキープしました。
豪ドル円は上昇したものの反応は限定的です。
ニュージーランドの経済指標
RBNZ政策金利発表
ニュージーランドの中央銀行はニュージーランド準備銀行(RBNZ)で、政策金利は年8回第2木曜日の7:00(夏6:00)に発表されます。2019年からは発表時間を早め、水曜日の14:00になります。
豪ドルと同じくNZドルもスワップ狙いの通貨としてFXトレーダーに人気のある通貨です。
サプライズの利下げは為替に影響を与えるとがありますので、金利発表前に安易にポジションを拡大するのは危険な場合があります。
2018年8月、RBNZは政策金利であるオフィシャル・キャッシュレートを1.75%に据え置きました。
しかし、発表後、NZドルは急落。結局10日の東京市場までに72.27円の2年7か月ぶりの安値を記録しました。
NZの利上げは2019年後半と見られていた市場の予測に対して、2020年まで金利を据え置くことを発表したこと、米中の貿易摩擦、中国景気減速懸念により、NZドルは対円、対ドルともに全面安となりました。
ニュージーランドGDP
ニュージーランドのGDPは四半期ごとの3月、6月、9月12月下旬の7:45(夏6:45)です。
GDPの発表はニュージーランドの指標の中では為替に影響しない方ではありますが、元々ボラティリティが高い通貨でちょっとしたことで大きく動きますので注意が必要です。
2018年9月20日のGDPは前期比1.0%と、前期の2倍のペースで加速し、2年ぶりの高い伸び率となりました。
発表と同時にNZドルは急伸、5分間で最大35pips程上昇しています。
ニュージーランド貿易収支
ニュージーランドの貿易収支は毎月下旬の7:45(夏6:45)に発表されます。
豪州の貿易収支よりも先に発表されるため、豪州の貿易収支の先行指標ともなっています。
ニュージーランドの最大の貿易相手国は豪州になりますのでオーストラリア経済の影響を受けやすいほか、オーストラリアの貿易相手国である中国の経済の影響を受けやすい傾向があります。
2018年8月24日発表のNZの7月貿易収支は予想を下回り、NZ統計局も「2009年末期以来最大の赤字額になった」とコメントしました。
輸入が伸びたことが数値が下がった原因となりますが、市場は織り込み済みで為替もほどんど反応しませんでした。