FXでは東京市場、ロンドン市場、ニューヨーク市場の三大市場と呼ばれる時間帯があり、三大市場の中でも最も活況すると言われているのがNY市場です。
ニューヨーク市場は為替取引がロンドン市場に次ぐ第2位の取引高で、市場参加者が多く、重要指標の発表があることからFXで最も大事な時間帯です。
世界最大の金融市場というだけあり、NY市場の午前中は1日のうちで一番取引が活発になり、値動きが激しくなります。
NY市場の時間 | 日本時間 |
---|---|
冬時間(標準時間) | 23:30~6:00 |
夏時間(サマータイム) | 22:30~5:00 |
ニューヨーク市場が活況する理由
NY市場が一日の中で最も活発となる理由は主に以下の3つです。
- ロンドン市場と時間が重なっている
- 参加者のメインが投機筋となること
- 重要指標が発表される時間帯
NY市場の時間帯は、世界一の為替取引高のロンドン市場と一部取引時間が重なっていること、その他の欧州市場、南北アメリカ大陸の国々や中東の市場が開いていますので参加者が多く取引が活発になります。
とくにNY時間の午前中は欧州時間、中東時間と重なるため取引量が膨らみます。
そのため、NY市場の午前中は激しい取引が行われますが、午後はNY市場の2倍もの取引量を誇るロンドン市場が終了することや投機筋の主な取引が午前中までに片付くことから午後は平和な値動きをすることが多いのが特徴です。
NY市場の主な参加者は投機筋と言われる金融のプロたち
日本ではFXといえば個人投資家を思い浮かべますが、実際に為替トレードを行っているほとんどがプロのトレーダーたちです。特にNY時間にはプロがメインとなって活躍する時間になります。
いわゆる投機筋と呼ばれる大きなお金を動かして実際に為替レートを動かす力も持っているプロトレーダーは大まかに分けて以下の2種類に分かれます。
機関投資家
銀行や証券会社、保険会社などの金融機関のことです。
株式や債券で保険や年金を運用していて、長期的なトレードが主体になります。
ヘッジファンド
富裕層などのお客様からお金を借り、資産を運用する投資会社です。
市場全体が上がろうが下がろうがプラスの収益を出すことを追求するファンドで、規制の厳しい投資信託と違い自由な運用で、積極的な投資を行います。
NY市場の値動き
23:30(夏時間22:30)~ NY市場午前中
米国の他、欧州や中東の市場がオープンしている時間と重なりますので非常に活発な取引となります。FXではコアタイム、ゴールデンタイムと呼ばれる時間です。
参加者の数がピークになるのがこの時間帯です。
さらに指標発表時は為替が急変しますので要注意です。
特にアメリカの超重要指標である雇用統計はアメリカ時間の朝のうちに発表されます。参加者の多くが注目している指標であるだけに値動きの変化を警戒する時間帯です。
24:00(夏時間23:00)オプションカットの時間帯
日本時間の24:00(夏23:00)はニューヨークの通貨オプションのカットオフタイム、「オプションカット」があります。
24:00のオプションカット直前までは各投資家が設定価格を狙って大きなポジションを構築する動きが出たり、逆に24:00を過ぎるとポジションを決済して元のレートに戻る動きがあったりと、激しい攻防の時間となります。
オプションカット終了後、午前1:00(夏0:00)にはロンドンフィキシングの時間になりますので、24:00~25:00は値動きの方向性が見えづらくなります。
2:00(夏時間1:00)~NY市場午後
ロンドンフィキシングの後は徐々に取引が薄くなり、NY時間の午後は欧州市場が終了しますので午前中ほどの動きはなくなります。
午前中に比べて午後は静かで小動きになりやすいというのがNY市場の特徴ではありますが、この時間は投機筋の仕掛け買い・仕掛け売りが起こると相場が短時間で暴騰・暴落する展開になりやすいので注意が必要です。
2011年3月11日(金)に三陸沖を震源とする東日本大震災が起こりました。
日本が未曾有の大震災に見舞われたことで円が売られると見た投資家が多く、実際に地震直後は円安方向に動いたもののその流れは長続きせずに円高方向に為替が方向転換します。
週明け後も円高方向に動きながらも1ドル=81~82円台を推移し、日経平均など、日本株式に比べれば為替は穏やかな値動きで推移していました。
しかし、3月17日の未明に1ドル=80円台を割り込むと1995年4月に記録した最安値1ドル=79.75円を5:30すぎにあっさりと割り込みました。
6:20には過去最安値の1ドル=76.25円まで下降し、わずか20分間の間にドル円が3円も下降しました。
これは投機筋によるストップロス狩り(ミセスワタナベ狩り)であったと言われていて、実際に日本人のFXトレーダーのストップロスを巻き込んだ大暴落となりました。
このように、NY市場終わり近くの日本時間の早朝は流動性が低く、投機筋によるストップ狩りが狙われやすい時間帯でもあります。日本人は寝ている間の時間になるのでポジション管理に注意が必要ですね。
NYオプションカット
オプションカットとはカットオフタイムとも呼ばれ、通貨オプション(通貨先物)の権利が使える締切時間のことを言います。
用語を整理すると、
- 通貨オプション…定められた期日または期間に定められた価格で買う(または売る)「権利」を売買する取引
- オプションカット…権利が使える最終締切時間
です。
簡単に説明すると通貨の先物取引の権利が失効する締切時間がオプションカットです。
要するに、「権利(オプション)が消滅する前になんとかしなきゃ」という投資家の動きがあり、自分で大量に資金を投入して為替を吊り上げようとする投資家がいたり、逆に下げようとする投資家がいてその攻防によって相場が活発に動きやすいのです。
もちろん東京にもオプションカットはあります。
東京オプションカットは15:00で、その前後に値動きに変化が起こりやすいのですが、実際にはNYの動きに比べると目立ったものではありません。
NYオプションカットは24:00ですが、取引量が多いため、値動きに影響が出やすくなります。
24:00を過ぎて大きなオプションのポジションが消滅して決済された後も相場が大きく動くきっかけとなります。
三大市場のポイントとなる時間
NYオプションカットをはじめとして三大市場にはそれぞれポイントとなる節目の時間がありますね。ここに整理しておきたいと思います。
市場 | 名称 | 時間 |
---|---|---|
東京市場 | 東京仲値 | 9:55 |
ロンドン市場 | ロンドンフィキシング | 1:00(夏時間0:00) |
NY市場 | NYオプションカット | 24:00(夏時間23:00) |
NY時間のFXトレード手法
NYボックス
NYボックスとはアメリカ人投資家のロブ・ブロッカー氏が考案した手法で、NY時間に入る前7時間の高値と安値を上抜けたら買い、下抜けたら売りというルールです。
特にユーロ/ドルの15分足で有効とされる手法です。
①15分足チャートを表示させ、NY時間の0:00と7:00に縦のラインを引きます。
日本時間では14:00と21:00(夏時間は13:00と20:00)です。
②引いたラインの中での最高値と最安値の位置に横のラインを引きます。
この四本の線に囲まれたゾーンがNYボックスです。
③ローソク足の終値が完全にNYボックスの高値を上抜けたら買いエントリーします。安値を下抜けた場合は売りエントリーです。
20pipsで利食いします。損切りを30pipsで入れておきます。
④損切りになった場合の対応です。リバーサルトレードを1回だけ行います。
損切りになったらすぐにドテンします。NYボックスの上限または下限のラインで利食いします。
この場面ではNYボックスを下抜けて売りエントリーしたものの、すぐに反転して上昇、損切りにかかってしまいました。
損切りになったらすぐに今度は買いポジションを持ちます。そして30pips下に損切り設定し、利食いはNYボックスの上限ラインです。
NYボックスでは、
- 最初のトレードで利益がでたらその日のNYボックストレードは終了です。
- 損切りになったらすぐにドテンしてリバーサルトレードを行います。損切りのまま終了はしません。
1回目で勝てばそこで終了、1回目に負けたらすぐにリバーサルルールに基づきトレードします。
2連敗したらその日は終了です。
最大でも2回までしかトレードしません。1勝したら終了、敗者復活は1回までという事ですね。
米国の重要経済指標
米国の指標発表は世界中の投資家が注目していて、ほとんどすべての通貨ペアに影響があります。
ここではアメリカの超重要指標の3つをご紹介しますが、まずは米国の金利政策のしくみを簡単に解説します。
FOMC(連邦公開市場委員会)
FOMCとはFederal Open Market Committeeの略で日本の日銀の政策委員会に相当するものです。
アメリカでは日銀のような中央銀行という形態はとっておらず、全米の12地区ごとに連邦準備銀行(Federal Reserve Bank、通称FRB)が置かれており、その上に監督機関であるFRB理事会が置かれています。
FRB理事は議長、と副議長を含めて7名です。大統領が任命し上院の承認を得て正式に任命します。
FRB理事会の主な任務は、
- 公開市場操作の基本方針決定に参加すること
- 公定歩合変更の決定
- 金準備率を設定すること
などです。
FRB理事会はアメリカの金融政策を作るうえで最も重要な組織ですので議長だけでなく各理事の発言は注目されています。
現在のFRB議長はジェローム・パウエル氏です。
2017年11月にトランプ大統領が指名した弁護士でブッシュ(父)政権で財務次官を務めた共和党主流派に近い人物です。
「低金利好き」のトランプ大統領が利上げ積極派とされるテイラー元財務次官を蹴って指名したパウエル氏ですが、実際にはFRBは利上げを行っています。そのことに対してトランプ氏に文句を言われているのがパウエル氏です。
トランプ大統領がFRBの利上げ方針に苦言を呈したあとでも、パウエル氏は利上げを継続する方針を明確にしています。
FOMC政策金利発表
FOMCが発表する政策金利のことで、年8回、6週間ごとに発表されています。FRBの理事7名と地区連銀総裁のうちの5名の計12名が投票権を持ちます。
発表時間が日本時間の4:15(夏時間3:15)で日本人トレーダーの多くが寝ている時間帯ということもあり「おはぎゃあああ」が起こることもある指標ですので要注意ですね。
FOMC政策金利はその結果だけでなく、理事の発言が注目されています。
FOMC開催日には「FOMC声明文」が公表されます。声明文の内容は簡潔なもので細かい内容は3週間後に公表されるFOMC議事録に記載されます。
声明文の内容は
- 政策金利を何%に決定したか
- 経済状況の認識
- 物価状況の認識
- 成長と物価のリスクバランス
- 今回の政策金利の決定に対して賛成者の名前と反対者の名前と主張
- 公定歩合の変更情報(あれば)
声明文が見られるポイントは、6週間前の前回の声明文と比較してどのように変化しているかという部分です。
9月26日の政策金利発表では市場の予想通り、政策金利が2.00%→2.25%に引き上げられました。
利上げは予想通りだったものの、声明文から「金融政策の運営方針は緩和的」の文言が削除されていたことが注目を浴びました。
これは、FOMCのメンバーは米国の金利はもう低金利ではないと考えているということを示唆しているということで、利上げは2020年で終了する可能性が高いのでは、という観測をマーケットが持ったことになります。
発表後のドル円は瞬間的に上昇したものの、利上げペースが加速することはないとの思惑から112円台後半まで下落しました。
トランプ大統領がFRBの利上げに対して不満を表明したことも利上げ継続は難しいと見られ、上値を重くしました。
FOMC議事録公表
FOMC議事録公表はFOMCの政策金利発表時の議事録の公表です。
発表時には「声明文」が公表されますが内容は簡潔なものですので、議事録を見る事で議論の内容や公式見解が明らかになります。
議事録の内容はアメリカの金利の先行きを予測する資料であるため、議事録を熟読する投資家は多く、内容も注目されています。
議事録は主に以下の内容で構成されています。
- 経済情勢
- 金融政策の回顧
- 経済予測
- メンバーの議論
- ニューヨーク連銀向け国内政策指令
- 経済予測サマリー
発表は政策金利決定日の3週間後の午前4:00(夏3:00)ですので日本人トレーダーは睡眠中の人が多いでしょう。FOMC政策金利発表に比べて動きは少ないもののポジション管理には注意が必要です。
8月1日のFOMC声明の議事録が8月22日に発表されました。
メンバーの大半が追加利上げがすぐに適切になると見ていることが分かった一方で、貿易、住宅、新興国市場の下振れリスクと指摘したことでドル売りの反応が見られました。ただし内容はほぼ市場の予想通りで反応は限定的でした。
雇用統計
雇用統計は為替市場に最も影響を与える指標で世界中の投資家が注目している指標です。
指標発表直後は一瞬でドル円が1円以上動くこともあるので事前にポジションを整理しておく投資家もいるほどです。
毎月第一金曜日の22:30(夏21:30)に発表されますがFXトレーダーには「お祭り」と言われるほどの月に一度の一大イベントとなっています。
雇用統計発表で稼ぐトレード手法!FXの祭りを攻略する必勝法とは
雇用統計は「雇用統計」という指標があるのではなく、いくつかの指標の総称です。
- 非農業部門雇用者数
- 失業率
- 建設業就業者数
- 小売業部門就業者数
- 金融機関就業者数
- 週労働時間
- 平均時給
これらのような指標が発表されますが、特に重要視されるのが「非農業部門雇用者数」と「失業率」ですので、一般的に雇用統計と言った場合には「非農業部門雇用者数」と「失業率」のことを指します。
また、この2つでは非農業部門雇用者数の方が注目度が高い傾向にあります。
2月2日の米雇用統計は雇用統計の中で最も注目される「非農業部門雇用者数」が+200千人と堅調な内容でこの内容が利上げの可能性を浮上させ、米ドル円は42pipsも円安方向で上昇しました。
このように、アメリカの重要指標は他の米ドル以外の通貨に投資をしている人も含めて世界中の投資家が注目しており、内容も細かくチェックされ、即値動きに反応します。
ドル円でも瞬間で1円以上動くことがありますので指標発表前のポジション管理には十分注意する必要があります。