東京市場はニューヨーク市場、ロンドン市場と並ぶ世界三大市場の1つで、9:00~15:00の日本の株式市場が開く時間帯です。
日本時間には中国の株式市場もオープンしている時間でもあります。
日本市場の動きとしては、前日の欧州時間、ニューヨーク時間で付けた値動きの中に収まったレンジ相場になりやすいことが特徴ですが、最近では要人発言に反応して為替が急激な動きを見せることもあります。
東京市場の値動き
9:00 東京為替市場前場オープン
9:00に日本の株式市場が始まります。株式の売買に伴って為替取引も活発になります。
オープン直後は為替がしばらく上下に動くこともあります。
9:55までは仲値に向かってドル円が円安方向に動きやすい傾向にあります。ゴトー日は特にその動きが顕著です。
9:55 仲値公示
この時間に各金融機関の対顧客相場が決定し、一日の為替レートが決定されます。
実需の注文が活発になるため特にゴトー日は円安方向に動きやすくなります。また、仲値決定後は円高方向に戻っていく動きも見られます。
FXの朝一番に稼ぐ「ゴトー日(5・10日)の仲値トレード手法」とは
10:30 上海株式市場オープン
中国の株式市場の動きは普段はあまり注目されませんが、中国の経済リスクが懸念されると為替に影響するきっかけとなります。
11:30 東京株式市場前場クローズ
日本の株式市場の午前中の取引が終わる時間です。
お昼休みを前に午前のポジションの手仕舞い注文が集中し、為替レートが引っ張られることもありますが動きは限定的です。
12:30 東京株式市場後場オープン
日本の株式市場の午後の取引が開始される時間です。この頃から海外勢の参加が始まります。
15:00 東京株式市場後場クローズ
日本の株式市場が終了する時間です。取引を手仕舞いする注文が集中し、為替レートが引っ張られることがありますが値動きは限定的です。
16:00頃からは欧州勢が参加してきます。
油断大敵!要人発言で値動きが急変することもある
マーケットに影響がある日本の要人は主に日銀総裁、総理大臣、財務大臣ですが、特に日銀総裁の発言は為替に直接影響を与えます。
バブル崩壊後は世界の要人に比べて日本の要人発言は市場に影響を与えるほどではありませんでした。様相が変わってきたのは2013年に黒田東彦氏が日銀総裁に就任したあたりからです。
アベノミクス3本の矢の1つのデフレ脱却を目指した強力な金融緩和策を発表した発言が、ドル円の動きを急変させることがあるため注目されています。
黒田バズーカ
近年の為替を急変させるほどの要人発言と言えば黒田日銀総裁の黒田バズーカです。
過去3回黒田バズーカと呼ばれる日銀の金融緩和が行われていますが、いずれも発表後は東京市場のドル円が3円程動くほどの威力を持っています。
黒田総裁の任期は2013年3月20日から2018年4月8までの5年間でしたが、2期目が再任されましたので任期は2023年4月8日までとなります。
つまり、今後ももしかしたら黒田バズーカが撃たれるのではないかとまだまだ黒田総裁の発言にはマーケットが注目しているわけです。
さて、黒田バズーカとは日銀による「異次元規模の緩和」のことを言います。
もともと先行して始まっていたアメリカの「QE量的緩和」に追随するように行った金融緩和でしたが、米国の緩和政策がGDPの5%の緩和であることに対して日本の緩和は20%という史上まれに見る規模の緩和を発表しました。
「異次元規模の緩和」とは実際にはどういうことかといいますと、2013年4月4日に黒田総裁が
「銀行に配るお金を2年で2倍に増やします。具体的には2012年末に138兆円だった供給量を年間60~70兆円ずつ増加させますよ。」
と発表しました。
日銀の通貨供給量が増えても私たちにお金が直接配られるわけではないのですが、そのお金を銀行から借りて設備投資や商品開発をする企業が増えれば、企業の収益が上がり、働く人の給料が上がり、新しく働ける人も増えます。
そうすれば個人の消費も増えて景気も回復の兆しを見せます。
2013年4月4日 黒田バズーカ第1弾
この時に発表された金融緩和政策は
- マネタリーベース・コントロールの採用
- 長期国債買入れ拡大と年限長期化
- ETF、J-REITの買入れ拡大
- 量的・質的金融緩和の継続
- 資産買入等の基金の廃止
- 銀行券ルールの一時適用停止
等です。
これらの中で特にマネタリーベースの増加と2%のインフレ目標の設定が大きなインパクトを与えました。
この日、92円台だったドル円が95円台まで急上昇しています。
日銀の為替介入でもここまでドル円が動くことはありませんので黒田砲のインパクトを物語っています。
2014年10月31日 黒田バズーカ第2弾
2014年の10月31日に日銀はサプライズ緩和を発表します。予想外の発表に再び市場は驚き、円安方向へ急伸しました。
黒田砲の第2弾はマネタリーベースを「前回年間70~60兆円って言ってたけど、まだ足りないみたいだから80兆円にするね。」というものでした。
さらに長期国債の買い入れ拡大、ETF、J-REITの買い入れ拡大を宣言しました。
2016年1月29日 黒田バズーカ第3弾
第3弾は市場が停滞していた頃でしたのでそろそろ来るのでは?という予想がありましたが、やはり内容にサプライズがありました。
このとき最も影響を与えたのが「マイナス金利の導入」です。
各金融機関が日銀に預けている当座預金の一部をマイナス金利とすることを発表し、「君たち、お金を貯めこんでないでもっと貸し出しなさい!預けている分はお金取るよ!」と金融機関を脅かしました。
為替は瞬間的に円安方向に急伸したものの、マイナス金利はネガティブサプライズでもあったため、株式市場は乱高下し、銀行株は軒並み下げました。
このように、日本時間はレンジ相場が多く、穏やかな動きを見せると言っても最近では日銀の発言により急激に為替が動くことがあります。
世界の投資家も日本の要人発言を警戒していますので、日銀総裁の記者会見がある日はポジションの管理をしっかりしておかないと危険です。
中国株式市場の動きが為替に影響することがある
日本時間は中国の市場もオープンしています。中国本土には上海市場と深圳(シンセン)市場があります。
2015年のチャイナショックのように、短期間に株価が大きく下落すると為替も過度に反応することがあります。
チャートは2015年8月24日の中国経済の減速懸念による世界連鎖株安の時のものです。
東京時間でも欧州・NY時間ほどではないものの、ドル円はトレンドを形成して大きく下降しています。
中国はGDP世界第2位の経済大国ですので、中国のネガティブな経済ニュースは東京市場の為替の動きにも影響を与えます。
最近では米国との貿易摩擦が懸念されていますので、中国の動きは要注意ですね。
このように基本的には日本時間はレンジ相場の穏やかな動きですが、日本の要人発言や中国経済に懸念が起こると為替が急変することがあります。
逆に言えば、為替が急激に動いた時は「何かがあった」ときになりますので分かりやすい時間帯ではありますね。
どちらにしても値動きのおだやかな時間だからといってポジション管理を怠らないことが大切ですね。
東京市場のFXトレード手法
日本時間は値動きが遅く、値幅の少ないレンジ相場になりがちなため、FXトレーダーの中には日本時間には取引は行わずにトレンドが発生する欧州時間から参加するという人も多くいます。
逆に荒い値動きが苦手な人におすすめなのが東京市場です。
ボラティリティが小さいために少ない値幅を狙ったスキャルピングがメインの手法となります。
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ボリンジャーバンドを使ったレンジ相場の取引
値幅の少ない東京市場の特徴を狙って、ボリンジャーバンドで6pips程度を取っていくスキャルピング手法です。
①まず、30分足または1時間足で急激なトレンドの発生や市場に混乱がない穏やかな相場であることを確認します。
②次に1分足のチャートにボリンジャーバンドを表示させ、バンド幅が10pipsくらい開いているチャートを探します。
ドル円では東京時間はバンド幅が6pips程度しか開いていないこともよくあるので、ドル円以外の通貨ペアで自分が得意な通貨ペアから選ぶと良いでしょう。
③±どちらかの2σラインにローソク足がタッチしたら逆張りでエントリーし、6pipsで利食いします。目安としてはローソク足がミドルバンドに到達したら利食いします。
東京市場では+2σと-2σの間をローソク足が行き来することもありますが、±2σラインを行き来せずにずるずると緩やかなトレンドを描きながらミドルバンドと±2σの間だけを推移することも多いので、深追いせずにミドルバンドにローソクが到達した時点で決済します。
注意点は次の3つです。
- 日本の指標発表の時間、日銀総裁の発言、総理発言などの要人発言のときには取引は行わないこと
- 16:00には欧州勢が入ってくるので遅くとも15:00まででこの手法でのトレードは終わりにすること
- ゴトー日の朝から10:00くらいまでは仲値によるドル円の円安の影響を受けやすいのでこの時間は避けてトレードすること
日本の経済指標で要注意なもの
日本の経済指標は日本円が絡むクロス円に影響があるものの2012年くらいまではあまり大きな影響を与えることはありませんでした。
しかし、2013年の黒田バズーカ以降、日本の要人発言で為替が反応することが増え、トレーダーも注目するようになってきています。
何といっても日銀金融政策決定会合は注目度が高く、同日の日銀総裁の会見も注目されています。
日銀金融政策決定会合
金融政策はどの国でも最も重要な指標となりますが、日本の金融政策決定会合では特に会合の内容が重要視されています。
会合は毎月1~2日、発表時間は11:00~15:00くらいの間です。
11:00~12:00に発表される場合は現状維持、13:00~14:00までずれ込んだときは期待大とする人もいますが、あまりそのようなバイアスでポジションを持たない方が良いでしょう。
政策決定会合では公定歩合、基準割引率、金融市場調節の方針、経済・金融情勢について話し合われます。会合の後、すぐに記者会見が行われ、話し合いの内容が公表されます。
2013年以降は会合の内容がかなり重要視されるようになり、おとなしい日本の為替市場に衝撃をもたらすことも増えてきましたので注意が必要です。
上のチャートでは、日銀金融政策決定会合は現状維持と発表されました。
発表が13:00と遅れる中に、12:00頃に上下に瞬間的な値動きがありました。発表直後は1ドル=111.02円から111.22円まで42pips急伸しています。
15:30からの黒田総裁の会見でも上下に大きなヒゲをつけながらドル円が急落しています。
日銀マネタリーベース目標
マネタリーベースは「通貨供給量」と言われ、日本銀行が銀行にお金をどれくらい配るかを調節する量のことです。
2013年4月4日の金融政策決定会合の内容で、2年間でマネタリーベースを倍増させるという所が非常に注目されました。(黒田バズーカ)
マネタリーベースは毎月発表されていますが、目標の発表は不定期です。
日銀短観
日銀短観の正式名称は「全国企業短期経済観測調査」といい、日銀が4月7月10月12月の朝8:50に発表しています。
日銀短観はいわゆるアンケートです。企業が自分の会社の業績や今後の先行きについてどう見ているのか、売上高や雇用人数、在庫、設備投資額が前回に比べてどれくらい変化しているのかを集計しています。
景況悪化は即時に数字に表れてきますので景気の先行きを見る上で重要な指標となっています。
GDP
GDPは日本語で「国内総生産」といい、日本国内で新たに生み出された商品やサービスの金額のことを言います。
1年間でどれくらいGDPを伸びたかどうかでその国の経済成長率を表しますので、日本のみならず各国で非常に重要な指標になります。
日本では四半期ごとに朝8:50に発表されますが、他の国に比べて発表が遅いので市場への影響は限定的です。
チャートは2017年8月14日のGDPの速報値です。
市場の予想+0.6%に対して+1.0%の発表と予想よりも良い結果が発表されていますが、もともとの上昇トレンドに乗っているというイメージでGDPの結果に対する反応としては限定的です。
完全失業率・有効求人倍率
アメリカの雇用統計に代表されるように、雇用に関する指標は国にとって非常に大切な指標となります。
米雇用統計は値動きが大きくなるため、それを利用したトレード手法もありますが、日本の雇用関係指標では大きく動くことはほとんどありません。
雇用統計発表で稼ぐトレード手法!FXの祭りを攻略する必勝法とは
日本では雇用関係の指標は「完全失業率」と「有効求人倍率」が発表されます。
発表時は月末または月初の8:30です。
鉱工業指数
鉱工業指数は約500品目の工業製品の1か月の生産量を指数化したものです。日本の工業、製造業の活況を見る指標です。
鉱工業指数は先進国では景気判断のための指標として重要な位置にありますが、日本の鉱工業指数の発表で為替に影響することはほとんどありません。
2018年6月29日発表の鉱工業指数は市場の予想値が+3.4%に対して結果+2.6%でしたが、反応は限定的になっています。