FIFO注文とは
FIFO注文とは、ファーストイン・ファーストアウトの略で「ファイフォ注文」「フィフォ注文」などと呼ばれます。
リアルタイムのレートに対しての即時発注で、注文時に新規・決済を指定せずに「通貨ペア」「注文枚数」「売買区分」を指定するだけの注文方法です。
FIFOは「先入れ先出し」という意味ですので、FIFO注文では反対ポジションがある場合、約定日時の古いポジションから順に決済していきます。
FIFO注文で反対ポジションがない場合は新規注文となります。
FXでデイトレやスキャルピングをしている人は「今すぐ注文したい!」と秒単位でポジションを手仕舞ったり注文を約定させたいですよね。FIFO注文はスピーディーに注文をして希望のレートに近い約定価格で取引するメリットがあるんです。
FIFOと似た注文方法に「LIFO(ラストイン・ファーストアウト)」というものがありますが、LIFOの場合はFIFOとは反対で約定日時の新しいポジションから決済していきます。
FIFO注文は一見ややこしい注文のように感じるかもしれませんが、一日に何回もトレードしたい人には向いている注文方法です。
慣れれば便利な注文方法ですのでまずはその考え方からご紹介していきたいと思います。
そもそも先入れ先出しとは
FIFOというのは為替用語ではなく、先入れ先出しという意味でいろいろな分野で使用されています。
日本語でいえば「ところてん方式」が似たような言葉ではありますが、実際「先入れ先出し」とはどのようなことを言うのでしょうか?
先入れ先出しをイメージしていただくのに、例として通常のエレベーターと「2方向エレベーター」を例に挙げたいと思います。
普通、ビルのエレベーターはドアが1つあるタイプが多いですよね。2方向エレベーターというのはドアが2つあり、1階と2階では開くドアが変わるタイプのエレベーターです。
入口と出口の方向が違うエレベーターは駅等のエレベーターで見かけたことがあるのではないでしょうか?
1方向エレベーター=先入れ後出し方式(LIFO方式)
通常の1方向エレベーターでは先に乗った人が奥に詰め、最後に乗った人がドアに一番近い場所に立つことになりますので降りるときは一番最後に乗った人が最初に降りることになります。
乗るとき
降りるとき
2方向エレベーター=先入れ先出し方式(FIFO方式)
2方向エレベーターで2つのドアが向かい合っている場合、最初に乗った人が奥に詰めますが、降りる階で開くドアが反対方向にありますので降りる際は最初に乗った人からエレベーターを降りることになります。
乗るとき
降りるとき
2方向エレベーターでは降りるときは乗った時と反対のドアが開きますので、奥に詰めた1番最初に乗った人から降りることができますね。
このようにエレベーターの例で見てみますと、通常のエレベーターがLIFO方式、2方向エレベーターがFIFO方式であることが分かります。
FXのFIFO注文とは
さて、FXのFIFO注文の話に戻りたいと思います。
エレベーターの例の通り、FIFO注文では
- 保有通貨ペアに対して反対売買の注文を行うと約定日時の古い順に自動的に決済されていく
- 新規・決済の区別がない
FIFOの注文画面ではFX業者によって変わるものの、私たちが選択するのは通貨ペア、注文枚数、それとロングかショートかのみです。注文はすべて成り行きで約定されます。
FIFOで注文した時に注文した通貨ペアと同じ通貨ペアの反対ポジションを保有していれば自動的に決済注文となり、同じ通貨ペアのポジションを保有していない場合は新規注文となります。
さらに、同じ通貨ペアで例えばロングでポジションを持っていて、FIFOでロング注文をした場合も反対ポジションではないので新規でポジション追加となります。
保有している建玉よりも多くの反対注文を出すと保有しているポジション分は決済され、超過した分は新規の注文のポジションとして保有ポジションとなります。
超過分は新規ポジションとなりますので、FIFOのシステムをうまく使って敢えて超過させた枚数の注文をしてドテン注文に利用することができる所がメリットです。
整理すると
- 保有していないポジション→追加
- 同一ポジション→追加
- 反対ポジション→決済
となりますね。
もう少し詳しく見ていきます。
【例】
1日に1枚(1万ドル)ずつドル円を買い、買いポジションを3枚保有しているとします。
10/1から10/3にかけて1万ドルずつ買いポジションを構築しました。
①10/4 1枚のFIFO売り注文をします。
FIFOで売り注文をすると一番古いポジションから決済していきますので、10/1の買いポジションが自動的に選ばれ、決済されます。
②10/5 1枚のFIFO買い注文をします。
決済する反対注文の通貨ペアポジションがないので新規買いポジションとして追加されます。
③10/6 4枚のFIFO売り注文をします。
現在保有している買いポジション3枚に対して4枚の売りですので、3枚は決済、残りの1枚は新規売りポジションとなります。
保有しているポジションより多くの売り注文をすることでポジション決済と同時に新規の売りポジションを保有することができます。
この仕組みをうまく使うと1回のFIFO注文でスピーディーにドテンをすることができる便利な注文方法なんです。
FIFOを使ったドテン買い・ドテン売り
通常の注文でドテン買い(売り)をする場合は一度保有ポジションを決済し、その後反対ポジションを新規で注文します。
しかし、FIFO注文を利用することで1回の注文で保有ポジションを決済、新規ポジション注文を瞬時にすることができます。
それではパラボリックを使用したドテン買いを例にしたいと思います。
最初の時点でユーロ円を1枚(1万ユーロ)買いポジションを保有しているとします。
チャートはユーロ円の1分足で、ローソク足とドテン注文に便利なインジケーターであるパラボリックを表示させています。
①の時点でこれまでローソク足の下に表示されていたパラボリックがローソク足の上に現れたことで上昇トレンドから下降トレンドへのトレンド転換を示唆しています。ここで買いポジションを決済し、ドテンで新規売りをしたいと思います。
現在、保有ポジションはユーロ円の買いポジション1枚ですので、FIFO注文で2枚売りを注文すればOKです。
【現在ポジション】
ユーロ円 ロング 1枚
【FIFO注文】
ユーロ円 ショート 2枚
↓
ロングポジション 1枚決済
ショートポジション 1枚新規注文
【注文後ポジション】
ユーロ円 ショート 1枚
ユーロのロング1枚に対してショート2枚を注文したので、結果、ショートポジションを1枚保有することになっています。
②も同様に、これまでローソク足の上に表示され、下降トレンドを示唆していたパラボリックがローソク足の下に移動してきましたので上昇トレンドへのトレンド転換と判断し、ドテン買いをしたいと思います。
現在はユーロ円の売りポジションを1枚保有していますので、ドテン買いするためにはFIFO注文で2枚買い注文すれば決済、新規の買いが一発でできます。
【現在ポジション】
ユーロ円 ショート 1枚
【FIFO注文】
ユーロ円 ロング2枚
↓
ショートポジション 1枚決済
ロングポジション 1枚新規注文
【注文後ポジション】
ユーロ円 ロング1枚
このように、ドテン買い、ドテン売りの場合は通常の注文モードでは決済注文、新規注文と2回操作をしなければなりませんが、FIFO注文では1回の操作で2つの注文が完了してしまいます。
デイトレやスキャルピングをするときや今のレートでトレードしたいときに即座に約定できるのでスピーディーにトレードしたい人には向いているシステムですね。
fifo注文のメリット
- スピーディーに注文できるので希望したレートで約定しやすい
- 複数のポジション決済も一括でできる
通常の決済方法は決済ポジションを指定して決済画面で決済注文を行うので手間がかかりますが、FIFO注文の場合は反対注文をするだけでポジションを決済することができますので希望したレートで素早く約定させることができます。
さらに反対ポジションを決済分よりも多く注文すれば瞬間的にドテンで注文できますので、デイトレなど分単位で瞬間のレートを捉えたい投資手法の人には便利な機能です。
また、複数の建玉も1回のFIFO注文で一括で決済することができます。
例えば、5枚の注文日時の違うポジションを持っていても、FIFOで5枚の反対注文をするだけですべてのポジションを1回の操作で決済することが可能です。
FIFO注文のデメリット
- 決済するポジションは選べない
- 両建てはできない
「このポジションは塩漬けにしておきたい」
「スワップ用の長年保有しているポジション」
など、1つの口座内でポジションの運用方法を混在させている場合や、それぞれのポジションに意味合いを持たせて保有している場合には、FIFO注文は向きません。
長期運用用ポジション、スワップ運用ポジションなどポジションにそれぞれ役割を持たせていてFIFO注文を行いたい場合は、FIFO注文用の口座と分けて管理することになります。
また、無理にFIFO注文を使うのではなく、通常の成行注文などで決済していけば大丈夫です。
FIFOでは両建てはできない
両建てとは、1つの口座で同一通貨ペアで同時に買いポジションと売りポジションを持つことができる仕組みのことです。
中長期スパンの投資を行いながら短期トレードを行ったり、損切りをせずに両建てにして一時的に損失を固定するために使用したりもします。
FX両建てナンピン必勝法は嘘!両建てにメリットや意味がない理由
相場が思惑から外れたときに、一時的に損失を回避するために両建てにしたりすることがありますが、身動きが取れなくなってしまったり、決済のタイミングでは損失が大きくなってしまったりと賛否両論あります。
ただ、残念ながらFIFO注文では両建てはできません。
両建てでポジションを持ちたい場合は、注文画面のFIFOモードをオフにすることになります。