トルコリラは、金利がとても高い通貨として人気があります。一時期、証券会社では、トルコリラ建ての債券や、仕組債が売れていた時期もあります。
しかしここ数年、トルコリラは下落を続けており、2018年8月13日は、一時1米ドル=6.995トルコリラと市場最安値を更新しました。
円に対しても、昨年9月の1トルコリラ=32円前後から15.785円と下落幅を広げています。
今回は、トルコリラの現況や将来の見通しについて分かりやすくまとめていきます。
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トルコリラが抱えるリスク
トルコリラ急落の背景には、様々な事情があります。今回は3つに絞ってまとめていきます。
①揺らぐ経済政策への信頼
トルコリラの急落の大きな要因は、エルドアン大統領の強硬姿勢です。
エルドアン大統領のもとでのトルコの経済政策に対する金融市場の信頼が揺らいでいるのです。
2018年6月24日の大統領選及び総選挙のダブル選挙で勝利して強権を握ったエルドアン大統領は、独裁色を強めていきました。
7月には経済政策の要の財務省に、娘婿のアルパイラクエネルギー天然資源相を横滑り就任させました。
一国の政治で身内を優遇することはあってはならないことです。当然、マーケットでは大統領の身内を重用する閣僚人事を不安視しました。
エルドアン大統領の影響力は、中央銀行にも及んでいます。
トルコ中央銀行は、2018年7月24日の金融政策決定会合で、市場の予想は利上げでしたが、引き締めによる利上げを嫌うエルドアン大統領に配慮して金利を据え置きました。(参考:日本経済新聞)
トルコ中央銀行は、本来利上げしなければいけないところを、エルドアン大統領の意向を無視することが出来ずに金利を現状維持にしたのです。
このことは、マーケット関係者に衝撃を与え中央銀行の独立性が損なわれたとの見方が強まりました。
エルドアン大統領の独裁振りはこれだけではありません。
アメリカへの強い批判や、外貨を売ってトルコリラを買い支えることをトルコ国民に要求するなど。
特にアメリカに対する強硬姿勢に関してマーケットは不安に思っています。次にアメリカとの対立についてみていきます。
②アメリカとの関係悪化に対する懸念
8月1日、アメリカ財務省は、2016年のトルコ・クーデター未遂事件に関わったとされる米国人牧師に対する制裁措置として、トルコ法相、内相の資産凍結の決断をしました。(野村アセットマネジメントより)
いまだに、トルコ政府は、米国人牧師の解放を拒否しています。
また、アメリカは8月10日、トルコに対して輸入関税をアルミニウム20%、鉄鋼50%へ引き上げることを表明しました。これは、他国比2倍の関税率になります。
ただでさえ不安定なトルコリラに追い打ちをかけました。これでトルコリラは更に急落をしました。
これを受けて、トルコのアルパイラク財務省は、「市場を鎮静化するための必要な措置を取り、必要な発表を行う。」との趣旨の発言をしており、内容に注目が集まっています。
今後アメリカとの関係が更に悪化すれば更なるトルコリラの下落もあるかもしれません。
③通貨安とインフレの悪循環を止められるか
トルコリラの急落とともに、トルコのインフレ率は、急上昇しています。
インフレ率を見ることの出来る指標に、消費者物価指数と生産者物価指数という経済統計があります。
消費者物価指数とは
商品や受けるサービスには、価格があり、その時々によって高くなったり安くなったりします。
これらの商品やサービスの価格を消費者物価といい、その平均的な動きを測定した数値を消費者物価指数と言います。
この消費者物価指数ですが、7月に発表された数値はなんと前年同月比15%代後半という数値が出ました。一年前より物価が15%も上がったのです。
生産者物価指数は、生産者から見た数値になります。
この生産者物価指数ですが、7月に発表された数値は、前年同月比25%の大幅な上昇になっています。
インフレ率が急騰しており、もしこの傾向が続けば、トルコリラの価値が更に損なわれ、通貨下落とインフレ率高騰という負のスパイラルに陥る可能性が十分あります。
またトルコリラが下落すると、米ドルなど外貨建て債務を抱える金融機関や企業の債務負担も大きくなってしまいます。
トルコリラの買い時
不安だらけのトルコリラですが、ずっと下がり続ける可能性は低いと思います。
過去にアルゼンチンのデフォルトやアジア通貨危機などもありましたが、トルコのGDPは2017年の統計で世界17位です。(IMF発表)
もしトルコがデフォルトしてしまったら、リーマンショック以上のインパクトになってしまいます。その可能性もないとは言い切れませんが、それは非常に最悪なケースと言えるでしょう。
デフォルトしないという前提で、トルコリラも買い時について探っていきます。
まずトルコリラの為替の推移が以下のようになります。
このように、トルコリラは、2008年頃は95円台をつけていましたが、今は16円~17円で推移しています。
ここまで右肩下がりで下がっている通貨も珍しいかと思います。
しかしトルコリラは、これだけ下がっていても投資家に人気のある通貨です。理由は3点あります。
- 金利が高い(政策金利は、2018年7月現在17.75%)
- 単価が安いので少額でも大きな取引が出来る
- 為替の変動が大きいので利益を出せる可能性がある
では今後どのポイントが買い時なのでしょうか。答えは、トルコの今後の政策次第というのが本音です。
本来であればこれだけ下落しているので押し目買いのポイントです!といいたいのですが、トルコの場合そんなに単純ではありません。
トルコリラを安定させ上昇基調に持っていくには、過熱気味の国内需要を抑え、経常赤字の縮小とインフレ率の抑制を促す対策が必要です。
そのためには、エルドアン大統領の意向を無視して、トルコ中央銀行は、物価の安定に向けて思い切った利上げに踏み切ることが必要です。
本来、中央銀行は独立した機関なので早急な利上げをするべきなのです。
利上げを行わなければ、インフレが更に加速し、トルコリラは更に下落し、経常赤字は更に広がってしまいます。
中央銀行が利上げに踏み切った後は、エルドアン大統領率いる政府の政策が重要になります。
短絡的な経済政策ではなく、長期的にトルコ経済の持続的な成長に目を向けた総合的な政策をとることが重要です。
有効な経済政策をとれば、トルコはGDP17位の大きな国です。急速にトルコリラの値を戻すことも十分あり得ると思います。
トルコリラを取引する上で重要な経済指標
アメリカドルや、オーストラリアドルのようにメジャーな通貨ではないのでトルコリラに影響を与える経済指標の情報は少ないです。トルコリラに影響を与える重要な経済指標についてまとめていきます。
トルコリラを取引するにあたって重要な経済指標は2つあります。
トルコ中銀政策金利発表
トルコリラを取引するにあたって最も重要な経済指標になります。
2018年7月発表された政策金利ですが、事前の予想は、利上げする予想が圧倒的に多かったものの、結果は現状維持でした。
その時の為替チャート以下のようになりました。
事前の予想では政策金利は17.75%から1%の利上げにより、18.75%になるのでは、という見方が大勢を占めていました。
しかし、蓋を開けてみれば利上げは無く、据え置きという結果になっています。
これを受けてトルコリラは急落、対円でも23.30円台から22.50円台まで下落しました。
トルコは先ほどが述べている通りインフレ率が大変なことになっています。インフレ率を抑えないと、経常赤字は広がり、トルコリラは下落してしまう構図なのです。
トルコリラを取引するにあたってインフレ率がどうなっていくかは非常に重要ポイントなので、当面政策金利は一番注目される経済指標になるかと思います。
消費者物価指数・生産者物価指数
消費者物価指数・生産者物価指数も先ほど述べた通り、インフレ率を計るうえでは非常に重要な指標になります。
上のチャートは2018年7月3日に発表された消費者物価指数・生産者物価指数前後のチャートです。
事前予想は消費者物価指数が前年同月比+12.5%に対し結果は、+15.39%になりました。
生産者物価指数は、前年同月比+22.10%に対し結果は+23.71%インフレの更なる悪化が懸念されて大きくトルコリラは下がりました。
他にも、雇用統計など重要な指標がありますが、当面はインフレ率に注目が集まると思いますので、政策金利、消費者物価指数・生産者物価指数に注目するのが良いかと思います。
リアルタイムチャート&レート
トルコリラ円(TRY/JPY)
トルコリラ円の最高値と最安値
最高値 | 最安値 |
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99.61円 (2007年10月) | 15.785円 (2018年8月) |
ドルトルコリラ(USD/TRY)
ドルトルコリラの最高値と最安値
最高値(直近10年) | 最安値(直近10年) |
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7.1513リラ (2018年8月) | 1.1502リラ (2008年7月) |
トルコリラ円10年間の為替レート推移
最後に、トルコリラ円の10年間の下落ではどんなイベントがあったのかを見ていきましょう。
トルコは2005年にハイパーインフレ対策としてデノミを実施し、それまで使ってきた通貨リラを廃止。その後新しいトルコリラを作りました。これによって、トルコリラ円は上昇していきました。
それからはトルコ経済の安定もあり、2006年トルコはEU加盟交渉を開始というニュースでさらにトルコリラは上昇しました。EU加盟交渉はかなり前からありましたが、本格的に交渉開始することになり、市場に好材料として受け止められた結果になります。以後、しばらくの間トルコリラ円は高値圏での推移を続けます。
ところが、アメリカのサブプライムローン問題やリーマンショックで大暴落。外貨が引き上げられたことによって、トルコリラは大打撃を受けました。その後はずっと安値で推移しています。
2008年9月リーマンショック
それまで上昇してきたトルコリラ円ですが、アメリカのサブプライムローン問題とリーマンショックによって、トルコリラ投資への熱気が冷めてしまいます。トルコリラ円は大暴落。これ以降、安値圏での推移が今も続いています。
2013年アベノミクス始動
日本の経済政策アベノミクスは全てのクロス円で円安が進行しました。トルコリラに対しても一時的に円安が進みましたが、その後はまた下落基調へ戻っていきました。
2015年8月チャイナショック
チャイナショックによって市場はリスクオフへ動きました。追随するように、トルコリラ円も大暴落しました。その後、トルコ自体に強い経済力がなく、さらにテロなどの勃発が相次いだこともあり、下落が続くことになります。
2016年10月トランプ大統領誕生
トランプ大統領が誕生したことによって、トルコリラ円も荒れ相場。市場では、もしトランプ大統領が誕生すればトルコリラは売られるだろうという予測がありました。
予想以上の下落ではありませんが、その前のイギリスEU離脱国民投票の流れもあり、現在もなお下落の中にあります。
まとめ
トルコリラは、高金利かつ取引単位が小さいので大きく利益を出せる可能性のある通貨です。
しかし、現在の政策状況やインフレ率をみるとしばらく不安定な動きをすることが予想されます。
為替の変動に一喜一憂することなく、自身の資産に影響することのない範囲での取引をおすすめします。
トルコリラ投資で利益を上げていくためには、下落のリスクを正しく認識し、どれだけ余裕を持って投資できるかが最大の鍵になります。
次の4点は常に意識するようにしてください。
- 一度に大きなポジションを持たず複数回に分けて買いましていく
- レバレッジは常に低く維持する
- 絶対に余剰資金で投資する
- トルコ情勢とそれを取り巻く環境のリスクを理解する
また、当サイトのツイッターアカウントでは、トルコリラに関する情報を日々発信していますので、よろしければそちらもフォローしてみてください。
ドルトルコリラは日足で見るとちょうど20MAあたりにきていて、この辺で押し目上昇、三角保合いになる可能性も結構あると思ってます。
その場合トルコリラ円は再度下落して16円台へ。13日のトルコ政策金利発表は利上げに関して意見がまちまちで、あまり期待しすぎないほうが良いと思ってます。 pic.twitter.com/HSOQGanxlW
— FXはじネコ (@moneful) 2018年9月9日
トルコリラ円、20円以下の下げ全戻しくらいまではあってもおかしくないなと思ってます。
そこまでは持ちませんので状況を見て利食いしていきます。#トルコリラ pic.twitter.com/YbqgVvqaP9— FXはじネコ (@moneful) 2018年8月15日