セリクラ(セリングクライマックス)とは、価格が大幅下落しているときにさらに外部からの悪いニュースが加わり、投資家たちがパニックを起こして投げ売りして大暴落することを言います。
以下の画像は、日経平均先物のチャートでセリクラが実際に起こったときの動きです。
価格が大きく下落していても
などと考え、ポジションの保有を継続していた投資家が想定していた以上の下落や市場の悪いニュースにより冷静さを失って投げ売ったり、
信用取引で追証に追い込まれてポジションを失ったりして売りが連鎖することで、このような動きになります。
この記事ではそんな「セリクラ」の特徴や、実際のチャート例を画像付きで紹介。
加えて、セリクラを予測する方法と対応方法もあわせてご紹介いていきます。
多くの投資家から恐れられている「セリクラ」をきちんと頭に入れておき、もしもの時も慌てないように備えておきましょう!
セリングクライマックスの特徴
これがセリングクライマックスの特徴的なチャートの形です。
チャートの形状としては、緩やかな下降から急にドーンと下げる形が典型的となります。
セリングクライマックスは暴落の最後の最後に起こる売りのこと。
みんなが売り終わればもう売りたい人は少なく、あとは買いたい人しかいません。そうなると、今度は価格が上昇していきます。
つまり、セリクラが終了し、底を付けば今度は勢いを上げて上昇するのが典型パターンです。
また、セリングクライマックスには以下のような特徴があります。
- 出来高の急増
- 長いヒゲ
- 大陰線と大陽線の出現
①セリングクライマックスの典型的な形が安値圏での出来高が急増するという現象です。パニック売りのような状態になりますので取引量が多くなり、価格も急降下します。
出来高は大きく下落する時も、その後、底をついてから反騰する時も大きく膨らみます。
②ローソク足で長いヒゲが現れたときは反転のシグナルです。
セリングクライマックスでは特に長いヒゲが出現する特徴的なチャートパターンになります。
③セリングクライマックスで長いヒゲの出現しなかった場合は安値圏に大陰線と大陽線が現れます。前の大陰線をはるかに包むような大きな大陽線が出現するのが大きな特徴です。
バイイングクライマックス(バイクラ)とは
セリングクライマックスの逆のパターンとしてバイイングクライマックス(バイクラ)という現象があります。
バイクラでは上昇相場の中で短期間に急激な上昇が起きた後、大きな下落になります。
セリングクライマックスと同様に買いが買いを呼び、出来高は急上昇しますが、いずれ買いたい人はいなくなります。
そこに売り注文が入り、価格は再度下落していきます。
このバイイングクライマックスのチャートはセリングクライマックスの反対の動きをしていますね。
急騰中は出来高が急増し、前の大陽線を孕むほどの大陰線が高値圏で出現しています。
実際のセリクラチャート事例【画像付き解説】
ここからは、実際にセリクラが起こったときのチャートの様子を、当時の画像付きで解説していきます。
1990年 バブル崩壊時の日経平均株価
こちらはバブル崩壊時の日経平均株価の日足チャートです。
バブル景気をおさらいしますと、バブル景気の始めは1986年12月1日の日経平均株価18,339円からのスタートです。
その後、株価はどんどん上がり、1989年の12月29日の最後の取引日、東証大納会で最高値の38,957円44銭を付けます。
下降は年明けの最初の取引、1990年1月4日の大発会から始まります。
そのまま株価は下がり続け、同じ年の1990年10月1日の最安値が19,781円、翌日の10月2日には反騰して22,898円で引けています。
チャートを確認すると、1990年9月末に連日大きな値幅で下落し、10月1日は長いヒゲを付けた大陰線で終了、翌日の10月2日はローソク足3本を包むほどの大陽線を作ったセリクラの典型的な形を作り出しています。
その後パニック的な動きは一旦終了して株価も落ち着きを持った動きをしているのが分かりますね。
2008年 リーマンショック クロス円の大暴落
2008年10月24日の為替市場で、特にクロス円で100年に一度と言われる大暴落が発生しました。
チャートは当時のポンド円の週足チャートです。
10月24日当日は一日で20円も下落したポンド円ですが、徐々に下落した後、一気に大暴落するというセリングクライマックスの形をきれいに作り上げています。
2008年はリーマンショックが起こった年ですが、特徴はリーマンブラザーズが倒産したのは9月15日で、その直後に大暴落したのではなく、リーマンショックから1か月ほど経ったところで大暴落しているところです。
2007年の7月を天井に、サブプライム住宅ローン危機が起こりとじわじわと下がってきていましたが、リーマンショックが起こり、さらに下落。
これまでの下降に耐えられなくなった投資家たちの投げ売り、その下降によりFXのポジションの強制決済などが相次ぎ、まさに売りが売りを呼ぶような状態でクロス円が一気に急降下しました。
下降はその勢いで年末まで続き、年明けの2009年1月にセリングクライマックスを迎えます。
為替市場の中でも特に暴落が激しかったのがポンド円です。
サブプライムショックは元々アメリカが発信源ですが、イギリスの金融機関も多くがサブプライムローンに関わっていたのです。
この影響でもともと騰落の激しいポンド円が急降下することになりました。
2018年 Coincheck騒動前後のビットコインの急落
最後は仮想通貨で起こったセリングクライマックスのチャートです。
こちらは2018年1月26日に発覚したCoincheck(株)のNEM流出事件の前後のビットコインのチャートです。
2017年末までは上昇していたビットコインが年明けから下降していましたが、1月26日にCoincheckが保有している仮想通貨のうち、NEMがほぼ100%流出してしまう事件が発生しました。
ビットコインはその後2月5日に底を付けていますが、この2018年1月の暴落はビットコインを購入している層に仮想通貨についてあまり詳しくない層が多く参入していたことも原因だと言われています。
この頃、テレビCMなどでしきりにビットコインのCMが流れ、「仮想通貨は儲かる」という風潮になっていました。
その結果、「買えば儲かる」という認識の初心者が参入してビットコインは年末に向かってバブルのような上昇をし、バブルが崩壊しかけたころに起こったNEM流出事件によりパニック売りになりました。
セリクラを予測する方法
実際のチャート例を見てきたところで、続いては「セリクラを予測する方法」を紹介していきます。
セリクラを予測するのは非常に難しいですが、相場における基本的な考え+αを頭に入れておくことが大切です。
みんなが楽観的になっていたら天井である可能性が高い
相場の大暴落を予測するのは非常に困難です。
プロでも判断を誤るほど難しいため、このような暴落が起こってしまうともいえるでしょう。
しかし、少し注目していただきたいことがあります。
それは、バブルです。
日本のバブル時代にしても、みんなが総楽観になった時が実は天井になっています。
天井になったらもう上がることはなく、下がることになります。
みんなが下がるわけがないと楽観的に思っていたところに下がったら、今度はパニックになって売りに走り、大暴落へと繋がっていきます。
景気や市場は同じ周期で上昇と下降を繰り返しているということを知っておく
市場は一定の周期で上昇と下降を繰り返しています。
一見、何か特別な事件があって大暴落をしたと思いがちですが、後で振り返ってみたら1つの周期が終わっていた、なんてことはよくあることです。
これをサイクル理論と呼びますが、この周期が分かっていると、多少のズレはあるものの
などと警戒することが可能になりますので、研究の余地はあるでしょう。
サイクルは50年、10年、7年、3年などさまざまなものがあり、期間が長い周期ほど大きな下降を呼ぶ大きな波になります。
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セリクラの対応方法
実際にセリクラが起きてしまった場合、投資家はどのように対応すればよいのでしょうか?
ここからは、セリクラへ対応するための方法、セリクラが起こっているときに気を付けるべきポイントを解説していきます。
急騰中(急落中)はポジションを取ろうとしない
まず基本的な部分ですが、セリングクライマックスの途中は激しく乱高下を繰り返しますので、ポジションを持つことは危険です。
一見底をついて上昇し始めたかに見えて再び新安値を更新することもありますし、一旦上昇しながらも再び下降トレンドを形成していくこともあります。
大底で買う事は魅力的なチャンスではありますが、危険の方が大きいのでトレンドが確定するまでは待ちましょう。
ダブルボトム、トリプルボトムに注意
大底で買うことができればよいのですが、ほとんどの場合上昇を確認してから参入しますので、大底から少し上の地点で買い参入することになるはずです。
その場合はダブルボトムに要注意です。
そのまま上がっていけばよいのですが、再び大底に向かって下げていくこともよくあります。
こちらはポンド/ドルの週足チャートですが、価格が急落してセリングクライマックスのような形を作っています。
しかし、その後一時上昇したものの、再び下降しダブルボトムの形を作っています。
2回目のボトムを見ると大きなヒゲを付けた陰線になっていますが、最安値が前回のボトムの安値を更新していますので前よりも低い価格を下げたことが分かります。
セリングクライマックスが綺麗な形を作らずに何回か安値を試すダブルボトムやトリプルボトムの形を取ることが多く、ボトムを突き抜けてさらに下降する可能性もありますので、価格がセリングクライマックスのボトムと判断して安易にポジションを取るのは危険です。
V字型に上昇していくのか、再び安値を試すダブルボトムになるのかはローソク足の形状が1つの目安になるのでチェックしておきます。
ローソク足の具体的なパターンを知りたい人は、「ローソク足チャートの種類と読み方|FX・株・仮想通貨」で解説しています。
大底の大陰線の次のローソク足に注目すると、陽線は出ているものの、前の週の大陰線を大きく包むほどの大きさではありません。
セリングクライマックスでそのまま上昇していく場合はボトムを作った次の足がより大きな勢いで上昇している大陽線を示す傾向になりますので、このチャートの形はやや弱いことになります。
ダブルボトム、トリプルボトムの形を取った場合はダブルボトムのネック部分(グリーンのライン)を上抜けたときがエントリーポイントです。
逆に、ボトムの最安値(オレンジのライン)を割り込んでいったときは下降トレンド継続と判断します。
損切り設定をしっかりしておく
セリングクライマックスに巻き込まれないために、損切り設定はとても重要なものになります。
セリングクライマックスで失敗した人の多くは「ここまでは下がらないだろう」と思っていたのに、下がらないだろうと思っていた水準より遥か下まで下がってしまったというパターンです。
FXで強制決済されてしまったら元も子もありませんよね。
損切りはつらいものですが、必ず設定しておくようにしておきましょう。
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