GMMAとは、Daryl Guppy(ダリル・ガッピー)氏がオーストラリアの株式市場で株式の運用をしながら開発したテクニカル指標で、日本語では複合型移動平均線と呼びます。
「ジー・エム・エム・エー」または「ガンマ」と呼びます。
指数平滑移動平均線(EMA)を12本同時に表示させてトレンドを視覚的に見せるテクニカル指標です。
要するにパラメーターの違うEMAを並べた指標なのですが、GMMAの考え方ではマーケットの参加者を投資家(長期線)と投機家(短期線)の2グループに分け、それぞれの行動パターンをEMAの位置関係と絡み合いの形状で判断します。
長期線でトレンドの方向と状態を判断し、短期線で値動きの動向を見て売買タイミングを判断するのに適した指標です。
この記事では、GMMAの使い方や手法を解説します。
使い方は、FXでも株でも仮想通貨でも基本的に同じなため、一度覚えてしまえば他の投資対象でも利用することが可能です。
その他のテクニカル指標については次の記事で解説しています。
テクニカル分析の種類・基本編|FXチャート・為替レートの見方まとめ
GMMAとは
GMMAは12本のEMA(指数移動平均線)を同時に表示させたものです。
12本のEMAは短期線6本、長期線6本に分けられます。
移動平均線では2本の移動平均線がゴールデンクロス・デッドクロスするところがシグナルとなりますが、GMMAでは平均線のクロスよりも短期、長期のラインの位置関係と形状でトレンドの強さと状態を判定します。
FX・株のゴールデンクロスとデッドクロス|見方や設定・だまし回避の方法
12本のパラメーターはダリル・ガッピー氏の検証により提唱されている数値ですので特に変更する必要はありません。
短期GMMA(グリーンのライン)
短期線のEMAのパラメーターは3・5・8・10・12・15
- 短期戦は短期間における投機筋の売買動向として考えられる。
- 大きなトレンドの中での短期的な価格推移を表しています。
長期GMMA(ピンクのライン)
長期線のEMAのパラメーターは30・35・40・45・50・60
- 長期線は長期間における投資家の売買動向として考えられる。
- 大きなトレンドの方向性やトレンドの強弱の判断をします。
GMMAのメリット
- 相場の流れ・トレンドが視覚的に分かりやすい。
- 通貨ペアを選ばない。
- 押し目買い・戻り売りの場所が分かる。
GMMAのデメリット
- レンジ相場には弱い
- 1つの時間足だけでは判断しにくい。
移動平均系のテクニカル指標はトレンド相場には適していますが、レンジ相場は苦手となります。
また、GMMAは短期売買にも有効な指標ですが、分析期間が短くなるほどダマシが多くなります。
5分足なら1時間足と、1時間足なら4時間足となど、大きな時間足と併用して使用した方がトレードの判断を誤りにくくなります。
GMMAの使い方
長期線の方向でトレンドを捉える
上昇トレンドでは長期線(ピンクのライン)が上向きになります。
長期線が右肩上がりの45度を保っていると安定した上昇トレンドを継続していると捉えます。
下降トレンドでは長期線(ピンクのライン)が下向きになります。
長期線が右肩下がりの45度の角度を保って推移していると安定した下降トレンドを保っていると捉えます。
横ばいでトレンドがない相場ではGMMAは12本のラインが収縮して序列が乱れます。
通常判断が難しい方向感のない保ち合い相場をGMMAが視覚的に表してくれるので、横ばいに入ったことを一目で判断することができます。
ラインの幅の収縮の度合いでトレンドの強さを確認できる
GMMAはトレンドが強い時にはそれぞれの線が一定の幅を保って推移します。
12本の線の幅が広がってきたらトレンドが強くなってきたということを、収縮してきたらトレンドが弱まっているということをGMMAが示します。
Aの場面では長期線が6本等間隔で広がって推移していることから強いトレンドであるということが分かります。
長期線のみならず短期戦も幅を保って推移しています。
一方、Bの場面になると長期線が収縮し、1本の線のようになっています。
短期線も序列を失い収縮して推移していることからトレンドが弱いことを示唆しています。
長期と短期の2つの束の間隔の幅でトレンドを確認できる
長期線のグループと短期線のグループの距離によってトレンドの強弱を捉えることもできます。
- 短期と長期の束の間隔が広い→トレンドが強い
- 短期と長期の束の間隔が狭い→トレンドが弱い
このGMMAでは長期線(ピンクのライン)のグループと短期線(グリーンのライン)のグループの束の間が空いています。
トレンドが強い場合はこのように2つの束の間隔が拡散して両グループが離れる状態になります。
トレンドが弱い保ち合い状態となると長期線(ピンクのライン)と短期線(グリーンのライン)が収束してきてお互いが近くなります。
短期線の束が長期線の束に近づいている場面ではトレンドのスピードが弱まっているということを示唆しています。
強いトレンドではGMMAの序列が綺麗に並ぶパーフェクトオーダーになる
GMMAの12本の線はトレンドがはっきりした場面となると短期の3日から長期の60日まで綺麗な序列で並びます。
GMMAでトレンドのシグナルを確認するうえではこの「序列」がかなり重要な役割を示します。
こちらは上昇トレンドの時のGMMAです。
短期(3日)から長期(60日)へと上から順にきれいに並んでいます。
こちらは下降トレンドの時のGMMAです。
長期(60日)から(3日)へと上から順に綺麗に並んでいます。
GMMAの売買シグナル
Ⅰ トレンドフォローシグナル
明確で継続的なトレンドを長期線で判断し、長期線の大きな動きに従ってエントリーします。
トレンドフォローでのエントリーポイントは安定した強いトレンドが継続すること。
急騰・急落はトレンドの最終的な動きになりやすく、トップアウトや底打ちの手前である可能性が高いため、長期的なトレンドである長期線に注目してトレンドの安定性を確認します。
エントリーのチェックポイント
- 長期線の角度が右肩上がりをキープしている。
- 6本の長期線が同間隔を保ったまま伸びている。
- 短期線の束が長期線の束と付かず離れず一定の幅の距離を保っていることがトレンドの安定と継続を示唆します。
- 最後に、長期・短期それぞれが拡散・収束を頻繁に起こしていないということを確認します。
上昇トレンドであれば右肩上がり、下降トレンドではれば右肩下がりで推移していることを確認します。
理想は45度の角度を保って推移していること。角度がきつすぎず、緩すぎないことがポイントです。
①のポイントでGMMAを見ると上記の4条件を満たしていることが確認できます。
このポイントで安定した上昇トレンドが継続すると判断して買いポジションをエントリーします。
②の時点で価格(ローソク足)が短期GMMAを下に割り込んでいます。ここが決済ポイントです。
②のように価格が短期GMMAをブレイクすること以外に、
- 短期GMMAの6本の線が収縮してきた
- 短期線と長期線の間隔が収縮してきた
ということも決済のポイントとなります。
いずれかのシグナルが発生したらトレンドがまもなく終了すると判断してポジションを決済します。
Ⅱ 押し目買い・戻り売りシグナル
トレンド中での押し目買い、戻り売りを狙うシグナルで、トレンドフォローの手法と同様にGMMAが明確で安定的なトレンドを形成しているときに限ります。
長期線の幅が収束して、トレンドがはっきりしなくなるとダマシの多いシグナルとなるので、トレンドの安定性がこのシグナルの重要条件となります。
6本の長期線が序列を保って、拡散させた間隔を保ったまま右肩上がりに推移していることを確認します。
①短期線が長期線に一旦接近するものの、跳ね返されて元の位置に戻っていくのが確認できます。この時、長期線の形状が重要になります。長期線は序列が乱れることなく整列したまま推移しています。
短期線が長期線に接近した後元の位置に戻ったところで新規買いポジションのエントリーです。
②決済ポイントは長期線の序列に注目します。長期線の序列が乱れてきたらトレンドが不安定になってきたと判断し、決済します。
この②の場面では短期線がこれまでと同様に長期線に接近していますが、長期線がこれまでのように安定した序列で推移していません。
そのためトレンドが安定しておらずダマシとなりますので、必ず長期線を確認しながらトレードを行います。
Ⅲ トレンド転換でのシグナル
①の地点で短期線の間隔が縮小し、序列が乱れていることを確認します。同時に長期線をチェックし、角度が平行に推移し、間隔が収縮しつつあることを確認します。
②短期線が長期線に接近し、ゴールデンクロスしたところが新規買いポジションのエントリーポイントです。
③決済ポイントは次のいずれかです。
- 短期線と長期線の間隔が収縮してきたとき
- 短期線の序列が乱れたとき
- 価格(ローソク足)が短期線をブレイクしたとき
ここでは短期線グループの序列が大きく乱れ、価格が短期線をブレイクしているので決済の判断をします。
Ⅳ 保ち合いからトレンド発生のシグナル
保ち合い状態が長く、長期線のグループが1本の線のように収縮している形からトレンド発生でのエントリーを狙います。
①保ち合いでは長期線、短期線ともに序列が乱れ、1本の線のように収縮します。
②短期線が長期線をゴールデンクロスし、さらにGMMAが長期線、短期線ともに扇のように拡散していくのを確認して新規買いエントリーです。
③決済ポイントはこれまでのⅠ~Ⅲまでの手法と同様、短期線と長期線の間隔が収縮してきたとき、または短期線の序列が乱れたとき、価格(ローソク足)が短期線をブレイクした時のいずれかです。
GMMA+RSIの組み合わせでトレンドの変化を察知する
移動平均系のテクニカル指標は直近の価格動向にどうしても遅れてしまう傾向があります。
そこで、逆張り系のオシレーター指標であるRSIを用いてより早くトレンドの変化を察知します。
RSIのダイバージェンスを見つけ、あらかじめトレンド転換を察知する方法です。
ダイバージェンスとは|オシレーター系を使ったトレンド転換の見つけ方
①の地点で価格は下値を更新し続けていますが、RSIが下値を切り上げて上昇しています。GMMAではまだトレンド終了のシグナルは出ていませんが、ダイバージェンスを確認したことによって、トレンド終了、反転を警戒することができます。
②の地点でも同様に価格は未だ上昇し続けているもののRSIが大きく切り下げているダイバージェンスが発生します。GMMAでは長期線が拡散して推移し続けているため、押し目買いのチャンスのように見えますが、RSIのサインによりトレンド転換を警戒して押し目買いを見送るという選択肢が生まれ、ダマシに遭いづらくなります。