モメンタム(Momentum)とは「勢い」という意味でその名の通り、相場の勢いをオシレーターにしたテクニカル指標です。
テクニカル指標のなかでは最もシンプルで一定期間内の価格の変化値に注目し、現在相場が上昇基調なのか下落基調なのかを判断するのに適しています。
チャートの下段に表示されているのがモメンタムです。中央のラインが0ラインでモメンタムでは0を基準として相場の勢いを見ます。
モメンタムの基本的な見方は、真ん中のラインの0(ゼロ)が相場の強弱の基準とし、モメンタムが0以上であれば強気相場、モメンタムが0以下なら弱気相場と判断します。
この記事では、モメンタムの使い方や手法を解説します。
使い方は、FXでも株でも仮想通貨でも基本的に同じなため、一度覚えてしまえば他の投資対象でも利用することが可能です。
その他のテクニカル指標については次の記事で解説しています。
テクニカル分析の種類・基本編|FXチャート・為替レートの見方まとめ
モメンタムの計算式
モメンタム = P - Pn
※P=終値
※Pn=n期間前の終値
価格の動きに勢いがあるかどうかを計測するモメンタムの計算式は、テクニカル分析の中でも最も易しい計算式です。
この計算式を言葉で置き換えると
モメンタム = 現在の価格 - n日前の終値
ということになります。
つまり、現在の価格がn日前に比べて何円上がったか、下がったかということです。
価格がn日よりも上がっていれば上昇の勢いがあるということ、価格がn日よりも下がっていれば下降の勢いがあるということになります。
相場の状況をシンプルに表現してくれる上で使い勝手の良いテクニカル指標です。
モメンタムの使い方
オシレーター系指標の見方は大きく分けて2つあります。
一つはオシレーターの水準に着目して「買われすぎ」「売られすぎ」を見る見方、もう一つはオシレーターの水準と変化に着目して「トレンドの勢い(モーメンタム)」を見る見方です。
モメンタムはこれら2つの見方をすることが可能な指標ですが、特に0ラインに注目した相場の勢いを見るのに便利な指標です。
0ラインの上抜け、下抜けを売買シグナルとする
モメンタムの最も基本的な使い方はモメンタムが上昇し、0(ゼロ)ラインを上抜けたら買い、下降し、0ラインを下抜けたら売りというものです。
①ではモメンタムが低い水準から上昇してきて真ん中の0ラインを上抜けています。この時点で価格の上昇基調が強いと判断でき、買いシグナルです。
②ではモメンタムが高い水準から下降してきて0ラインを下抜けています。ここで価格の下落基調が強いと判断し、売りシグナルです。
モメンタムの位置と方向で相場の勢いを判断する
モメンタムでは、数値が0ラインに対してどこに位置しているかという数値の場所とモメンタムの上昇・下降の勢いの角度を見ることで相場の勢いを見ることができます。
モメンタムでの相場の勢いの見方
- モメンタムが0を上抜いた後、0より上のラインでさらに上昇していれば上昇トレンド継続。
- モメンタムが0を下抜いた後、0より下のラインでさらに下降していれば下落トレンド継続。
- 価格が上昇しているときにモメンタムの上昇が緩やかになってきたら、価格の上昇エネルギーが弱くなってきている。
- 価格が下落しているがモメンタムの下降が緩やかになってきたら、価格の下降エネルギーが弱くなってきている。
1.図ではモメンタムが0ラインを抜けたあとモメンタムが上昇し続けていますので、価格も同様に上昇トレンドを継続していることが分かります。モメンタムの上昇する角度からも相場の勢いが強いと判断できます。
2.今度はモメンタムが0ラインを下抜けたあと、モメンタムの下降が続いています。価格をチェックするとローソク足が強い下降トレンドを描いていることが分かります。
3.価格上昇中にモメンタムが上昇する勢いが緩やかになってきたらトレンドの勢いが弱まっていると判断します。上昇トレンド、下降トレンドが明確な局面では次の関心ごとは「いつそのトレンドが終焉し、転換するか」ということです。モメンタムは価格に先行してトレンドの勢いの低下を知らせてくれます。
モメンタムが0ライン上を行き来するときは様子見
モメンタムが頻繁に0ラインを行き来するときはダマシが多く、シグナルとしては機能しませんので様子見をします。
オレンジ色で囲ったエリアの中ではモメンタムは方向性がなく0ラインを何度も行き来しています。このような場面ではモメンタムは機能しなくなるのでエントリーしないよう注意が必要です。
ただし、このような方向感のない相場が長く続けば続くほど、相場エネルギーを蓄積しており、上下どちらかに大きくエネルギーが放出される傾向にあります。
モメンタムはうまく機能しませんが、このようなときはどちらかに大きく動く前触れと判断し、大きなトレンドが開始されるのを待つこととなります。
モメンタムのメリット
- シンプルである
- ボックス相場でうまく機能する
- オシレーター系の指標だが相場の勢いを見ることができる
- ダイバージェンスを見つけることで価格の動きに先行してトレンドの天井と底を示してくれる
モメンタムのメリットはオシレーター系の指標でありながら相場の勢いを判断することにも役立つということです。
モメンタムが0ラインを超えたあと、上昇または下降を継続している場合は相場の勢いが強いと判断できますし、価格が上昇(下降)中であってもモメンタムの上昇または下降の勢いが弱まっている場合は相場の勢いが弱まってきていると判断できます。
ダイバージェンスとは|オシレーター系を使ったトレンド転換の見つけ方
モメンタムのデメリット
- トレンド相場で誤ったシグナルを発し、ダマシになることがある
- 0ライン上を方向感なく上下しているときはダマシが多く、モメンタムが機能しなくなる
- 通貨ペアごとにモメンタムの値が変わってしまう
モメンタムの使いにくさの1つが、通貨ペアや投資銘柄ごとにモメンタムの値が変わってしまうために、モメンタムを見る値の数値が銘柄ごとに異なることになり、扱いづらいということです。
例えば、A株価の今日の終値が111円だとします。一方、B株価の今日の終値が2200円だとします。
A株価の10日前の終値が110円の場合、モメンタムは+1となります。一方でB株価の10日前の終値が2000円の場合、モメンタムは200となり、モメンタムの値がA株価とB株価では200倍の差となってしまい、使用する数値が変わってしまいます。
これはモメンタムが単純に価格の差を使用しているために起こることで、このようなことを避けるために価格の差額ではなく価格の値動きの割合を使用しているのがROCとなります。
モメンタムの逆張り手法
モメンタムのダイバージェンスを利用した手法
モメンタムのダイバージェンスに注目してトレンドの転換を察知する方法です。
①ではローソク足がまだ下落を続けているにも関わらずモメンタムが下値を切り上げていますので、トレンド転換が近いことを察知して買いエントリーを行います。
②は未だローソク足が上昇しているにも関わらず、モメンタムが上値を更新できないでいますので上昇トレンドの終焉を察知し、買いポジションを決済、または新たな売りポジションエントリーをします。
③では①と同様に価格が下落を続けている一方、モメンタムは上昇していますので、下落トレンドの終了のシグナルと判断し、保有している売りポジションを解消して新たな買いポジションのエントリーを準備します。
ボックス相場でモメンタムを使った逆張りトレード
モメンタムが売られ過ぎの水準となったら買いサイン、買われ過ぎの水準となったら売りサインです。
この手法が有効な局面は、横ばいの保ち合いが継続している局面です。
トレンドが保ち合いである以上、「買われすぎ」はいずれ反転して価格が下がることを、「売られすぎ」はいずれ反転し価格が上がることを示唆しているという前提があるからです。
上記のチャートはトレンドラインからボックス相場であることが確認できています。
チャートでは具体的にはモメンタムが-0.0004付近に到達したら買いサイン、0.0004付近で売りサインです。
このチャートでは0.0004が反転の基準となっていますが、モメンタムのボックス相場での天井となる数値は通貨ペアや相場のボラティリティによって変動します。
このような数値が相場により変動してしまうところがモメンタムのデメリットの1つとなりますので、ローソク足でボックス相場を確認したら、モメンタムにもボックスのトレンドラインを引いて該当する数値を確認してそのボックス内での逆張りの指標として使用すると判断しやすいです。
さて、チャートではローソク足がボックス相場を形成する中、モメンタムも同様にボックスの中で上下の推移を繰り返していることが分かります。
ここでは-0.0004~0.0004の間を推移していますので、モメンタム0ラインから上昇してきて0.0004ラインにタッチしたところで価格が反転すると判断して売りのポジションをエントリーします。
その後、モメンタムが0ラインを下抜けて-0.0004ラインをタッチしたところで反転を判断して買いのポジションをエントリーします。
ダマシを避けるためには、モメンタムが0.0004ラインをタッチした後、モメンタムが0ライン方向に反転したところでエントリーすると、より確実にトレードできます。
モメンタム+パラボリック+移動平均線で順張りトレード
オシレーター指標のモメンタムにトレンド系指標の移動平均線、さらにパラボリックを使用した順張りの手法です。
①でチャート下段のモメンタムを確認すると0ラインを上抜けていることを確認できます。
ローソク足の方に注目するとパラボリックのドットがローソク足の上から下に移動してきていて上昇トレンドの転換を示唆しています。
ドットが反転した直後の点と点が近い間隔の時にはダマシが多いため、まだ買いの判断はしません。
パラボリックのドットの間隔が開いてきたことと同時に移動平均線がゴールデンクロスしていることを確認できた時点で買いのエントリーです。
FX・株のゴールデンクロスとデッドクロス|見方や設定・だまし回避の方法
②の時点でチャート下段のモメンタムが0ラインを下抜けています。
パラボリックがローソク足の上に現れ、価格反転のサインを出しています。
パラボリックのドットの間隔が開いてきたところで移動平均線がデッドクロスしていることを確認し、買いポジションを決済します。
パラボリックはドテン買いのシステムですので、このまま即座に売りポジションを持つ戦略を取ることもできます。